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2007年05月10日 07:40

アメリカのベンチャー小史~ルート128(ボストン)(五十嵐/ベンチャー企業)

■歴史から考える
今回と次回は、世界中でベンチャーが注目を集める契機となった
アメリカの二大ハイテク・クラスターについて話します。
現在の日本におけるベンチャー支援環境が整った背景には、
少なからず過去の日本のベンチャーブームが関係しています。
このように歴史から現在のことを考えることは有効な手法です。


■ベンチャーの歴史におけるボストン
今メジャーリーグの松坂大輔加盟で盛り上がっている
ボストンは、アメリカの独立戦争発祥の地、
古きアメリカがある町なのですけども、
実はベンチャーの世界でも、ボストンは、
非常に大きな意味を持っています。
当然、ボストンの状況も日本に影響を及ぼしています。


また後日お話ししますが、
世界で初めてのベンチャー企業への投資会社である
ベンチャーキャピタルというのも、
ボストンからスタートしています。


ボストンのエポックメーキングとなった企業は、
もうすでに無くなってしまいましたが、
DEC(ディジタル・イクイップメント)です。
後で詳しくお話ししますが、
DECが誕生し、その結果ボストンの郊外に
ルート128といった環状線に沿って、
たくさんのベンチャー企業が生まれました。
一方でDECを作ることによって成長した
ベンチャーキャピタルといった会社が、
ベンチャー収入は非常に大きな力になるといったことで、
こちらの方も全面に広がっていきました。


学術的な地域研究においては、
ボストンのような地域はハイテク・クラスターといわれます。


■クラスターとは
クラスターとは、邦訳すると「産業集積」なのですが、
「ぶどうの房」の意でマイケル・ポーターが提唱したものです。
国際的な競争力を有する地域は、
競争力を有する状態にあることで
より競争力の向上が加速されていくのだと
ポーターは説明しています。
クラスターは以下の4つの特徴を持ちます。
(1) 非公式のネットワークの存在と効率性・柔軟性に富む組織形態
(2) 産業と機関との連携が相互補完的
(3) 市場競争と垂直統合的な(縦と横)のネットワーク
(4) イノベーションの場の形成(外部効果とスピル・オーバー)


■ルート128
ルート128の形成について伝統と軍需の点から見ていきます。
もともとは、全米開拓当時より、
繊維や兵器、耕作機械など、
アメリカのイノベーションの
中心だったということは間違いありません。
ところが20世紀に入り、
それらが賃金の低い他州の方に移り、
一時ボストンは衰退を始めます。
その巻き返しの基盤となったものが
1861年MIT(マサチューセッツ工科大学)の創立です。
近接するハーバード大学は
産業界と意識的に距離を置いていましたが、
MITは産業向け研究やコンサルティングを積極的に奨励し、
GE、コダック等の民間企業と密接な関係を持ちました。


そして、1940年代~50年代にかけて
アメリカ政府の軍事開発
(レーダー、ミサイル誘導、航行システム)が進み、
政府は3億3000万ドルを外部委託したのですが、
その3分の1がMITの研究機関に委託されました。


戦争終了後、ハーバード、MIT、ボストンや
企業の研究所が立ち並ぶリサーチロウ(研究者通り)に
知的労働者と技術労働者が集まり、
これが大きな人材の供給源となりました。
その後、MIT学長や、金融資本家や学者たちが、
戦時中に開発された新技術を活かす
(元来は保守的で投資信託や保険会社での運用だった)
企業に資本を提供しようと
ハーバードビジネススクール教授ジョージ・ドリオを責任者に
ARD(アメリカン・リサーチ・アンド・デベロップメント)を設立しました。
1957年ARDが設立した会社が7万ドルを投資、
毛織物の廃屋から事業を開始したこの会社は
IBMに次ぐ第2のコンピュータメーカーに成長し、
1971年には株式公開に伴い投資リターンは5,000倍の3.5億ドルになりました。


ルート128はボストンを一周する環状ハイウェイで、
1951年に最初の27マイルが完成しました。
ボストン郊外の約20の町をつなぎ、
MITやケンブリッジに近く、
しかも郊外の感じのよい住宅地で、
理想的な職住接近の地域です。
ボストンに限らず、人間の考えることはどこも同じで、
ボストン、ケンブリッジ地域あるいは
国際空港へのアクセスが良好な上に、住環境は最高です。
つまり、ハイテク・クラスターだから人々が集うのではなく、
生活環境が良いから人々が集まり
クラスターが形成されたと考える方が理に適っていると思います。


ベンチャーの歴史を見ると、
1番最初にこのような存在として現れてくるのが、
ボストンですから、これは1つの例として
記憶に留めておく必要があります。

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