BBIQモーニングビジネススクール > 麻生知事の自動車150万台構想に向けて (ロジスティクス/星野)

2006年06月19日 08:20

麻生知事の自動車150万台構想に向けて (ロジスティクス/星野)

麻生福岡県知事が「自動車150万台構想」という目標を提案されています。
今日はこのことについて物流の視点も入れてお話したいと思います。


■「北部九州自動車製造150万台構想」の目指すもの

去年の九州の自動車生産台数は
合計で90万2千台でしたが、
今年は100万台を突破すると言われています。
さらに麻生知事の提唱される「ポスト100万台計画」では
“2009年までに150万台を製造する”というもので,非常に大きな目標です。
実際に自動車生産の動きを見てみると,
福岡には日産自動車九州工場,トヨタ自動車九州,
大分にはダイハツ車体というように,
九州には日本の主要メーカーの自動車工場があります。
自動車アイランドといわれる九州では,
100万台とか,150万台という数字の大きさももちろんですが,
これらの企業の動きを見ていると、
それ以上にいくつかの大きな意味があります。


■ 生産拠点としての九州の独自性

例えば,トヨタ自動車九州では,
レクサス,ハリアーというトヨタを代表する
最新の最上級グレードの車種が生産されています。
さらにトヨタで生産された完成車は博多港から
上海,天津など中国4港に直接,輸出されます。
どこの自動車メーカーもそうですが,
これまで国内で生産された自動車は,
トヨタであれば名古屋に一旦集約されて,そこから海外へ輸出されていました。
ところが,九州は中国に近いため,
名古屋を経由するより物流コストがかからない。
そこで,トヨタ自動車九州は
博多港から直接中国へ輸出することになりました。
トヨタだけでなく大分県中津市にあるダイハツ車体という会社でも,
アジア,ヨーロッパへ中津港から直接輸出することを検討しているようです。
九州は、自動車産業にとって
それだけ自律性を持った生産拠点になりつつあると言えます。


最近では特に,九州を地盤とした自動車会社,
ということが非常に意味を持ちはじめていると感じます。
例えば,ダイハツ車体では
今年の株主総会で社名を「ダイハツ車体」から
「ダイハツ九州」に変更するといわれています。
また,日産自動車は,九州に生産工場を
持つ3社の中で最も生産能力が高く,年間52万台を供給していますが,
この日産自動車のルーツを見ると,
戸畑鋳物(株)というまさに九州にルーツがあります。
自動車産業を代表するこれらの会社が,
九州に位置しながら新しい動きを見せるということは,
生産台数の数字以上に大きな意味を持っていると思います。


■ 九州内での部品調達比率を7割に

ご説明した生産台数と共に,九州の自動車産業では,
九州内での部品の調達比率を7割まで高めることも目標としています。
これがどういうことかというと,今,日産自動車の九州工場では,
九州内での部品調達率は5割程度ですが,
これを6,7割に高めようしているわけです。
先程,完成車を一旦,名古屋だとか横浜に持ってから輸出するより,
直接輸出するほうが物流コストは安くなると言いました。
これと同じで,部品などの原材料についても、
近隣から調達するほうが当然安くつきますよね。
自動車製造にとって,これは非常に大きな意味を持ちます。


トヨタ,日産,ダイハツのような
大きな自動車メーカーが九州を拠点に生産をする。
そうすると,自動車産業を支えるいろいろな
部品メーカーや関連産業が、
その製造拠点の周辺に集まってくる傾向があります。
これを産業クラスター*1の形成といいます。
大手自動車メーカーで生産する自動車の為に,
非常に高品質なパーツのメーカーが九州周辺に集まってくることで,
まさに必要な部品が,必要な時に必要な場所に,
しかも近い場所にあるわけですから,
物流コストが安くなります。物流コストが安くなると,
九州で自動車を生産することの競争力がますます高まり,
それによって自動車アイランドとしての九州が
さらに成長に向かうという,いい意味での
シナジー*2が期待出来ると思います。


最近,道州制*3という動きもありますが,
自動車産業という自己完結性の高い産業を
九州内に持つということは、大きな意味があるといえます。




<用語説明>

(*1)シナジー

   :事業や経営資源を適切に結合することによって生れる相乗効果のこと。

(*2) 産業クラスター

   :〔クラスター(cluster)は同じものの群れ,集団の意〕
    特定の産業分野について,資材供給・生産・流通・販売など
    の関連企業や,金融・教育・研究などの支援機関が
    地理的に集中し,それらが連携、競合しながら
    有機的に結びついている状態。
    米国の経営学者マイケル=ポーター(Michael E. Porter)が
    提唱した概念で、情報産業におけるシリコン-バレーなど。

(*3)道州制

   :現行の府県制を改め、数府県を包括する
    自律性の高い道または州を置く制度。

前の記事へ 次の記事へ


ブログ&ポッドキャスト検索

ページの先頭へ戻る