2007年06月21日 07:40
地域クラスターと大学(その1)(地域経済政策/谷川)
今、日本の大学は、
産学連携に大変熱心になっています。
特に国立大学では、
3年前に法人化されたこともあり、
「出来るだけ自分たちで外部からお金を稼ぐべし。
また地域、社会に貢献すべし」
といった雰囲気が大変高くなっています。
そして地域クラスターの発展、
地域経済を活性化させる存在としての、
大学の役割は、
大変大きなものであると
言われています。
■なぜ大学が地域活性化に役立つのか
なぜ大学が地域活性化に役立つのかというと、
やはりアメリカの大学の例が
大きいと思います。
もう10数年たちますが、
1990年代からアメリカの経済は、
大きく成長して、
世界の経済はアメリカ経済が引っ張る、
といった状況がありました。
その中心となった地域の一つが
シリコンバレーですが、
そのシリコンバレーには
有名なスタンフォード大学があります。
スタンフォード大学に代表されるように、
アメリカでは大学から、
どんどん新しい企業、
産業が生まれているのです。
Google、Yahooなどのネット企業はその典型です。
またシスコシステムズ社など、
例を挙げればきりがありません。
またこういったIT企業はもとより、
バイオ関係では、遺伝子組み換え技術で有名な
ジェネンテックなどの大企業も生まれています。
つまり、大学発の技術、
大学の卒業生、
そして大学の教授が、
創った企業や産業が、
アメリカの中心産業に
なっているという現実があるのです。
そのような経済発展に貢献する
アメリカの大学のシステムを、
何とか日本にも持ち込めないかということで、
日本の政府も経済界も、
日本の大学に対して、
もっと頑張ってくれという
プレッシャーをかけているのです。
■地域経済の活性化の核としての大学
他の事例はサンディエゴにあります、
カルフォルニア大学サンディエゴ校の例です。
この大学はカルフォルニア大学の1つの分校です。
スタンフォード大学ほどではありませんが、
素晴らしい技術を創出して、
新しい産業を創造する大学として有名です。
皆さんの中には、auの携帯電話を
お使いの方がいらっしゃると思います。
auが使っている携帯電話の基礎技術は、
この大学の教授が作った技術です。
その大学の教授が社長として
クアルコムという会社を興し、
その技術を活かしました。
このように
アメリカの一地方の大学発技術が、
世界の携帯電話の、
技術の標準の1つになっているということは、
非常に素晴らしいことだと思います。
そしてもう1つ是非、強調したいことは、
このカルフォルニア大学サンディエゴ校が、
サンディエゴ地域の
産学官連携ネットワークの中心的存在として、
活躍しているということです。
通称CONNECT(コネクト)というのが
そのネットワークの名前なのですが、
地域の自治体政府や経済界を巻き込んで、
地元発のベンチャーを育てるための
支援ネットワークを、
カルフォルニア大学サンディエゴ校が中心となって
つくり、活発な活動をしています。
これはまさに、地域経済の活性化の核に、
大学がなっているという事を意味しており
大変素晴らしい事例だと思います。
「大学の価値は何か」と問われた時、
研究と教育であるとよく言われます。
研究面と教育面での大学の社会貢献は、
普通に考えられることですが、
よく考えてみると、
大学の持っている価値は
研究と教育だけではありません。
大学の持っているブランド、
大学の持っている施設、
それから大学OBなど、ネットワークです。
伝統のある大学のOBであれば、
産業界をはじめ、いろんなところで
活躍されています。
そういったネットワークはとても貴重です。
また大学同士のアカデミアネットワークも重要です。
大学は中立的存在ですから、
様々な組織と組織を連結するときの、
中核になる事が出来ます。
ニーズマッチングをするときの、
中核になります。
ですから、大学をもっと使おうという時には、
研究力、教育力だけでなく、
ネットワークや大学のブランド価値にも
関心を持つべきです。
カルフォルニア大学サンディエゴ校は
そういった価値を使って
社会貢献しているのだと思います。
競争力のあるアメリカの大学としては、
テキサス州オースティンにある
テキサス大学のオースティン校なども
大変有名な大学です。
その他、
マサチューセッツ州のボストンにあるMIT、
コロラドのデンバーにあるコロラド大学、
などが著名です。
■アメリカの大学と日本の大学の相違点
大学が産学連携、社会貢献をしようとする、
その背景は何でしょうか。
アメリカの大学の場合、
大学同士の競争が厳しく、また自立も求められます。
お金を稼ぐため、また優秀な学生を集めるために、
良い教員を集めなければいけません。
良い教育をする良い教員、
良い研究をしてお金を取ってくる良い研究者を確保するため、
大学内における教員、研究者の評価は大変厳しいです。
大学内での競争も大変です。
このことが
そして産学連携、グラントを得られる研究をとることに頑張る
ということにつながり、
世界中から良い人が集まるという事、
高いレベルの研究力、教育力を実現する事に
つながっています。
加えて大学自身のカルチャーが、
オープンなのです。
日本の大学はよく
「象牙の塔」などと言われるように、
閉鎖的なイメージがあります。
私も福岡市内で
九州大学のことを話題にしたとき、
「九大のような化石は相手にしない」
などと言う方がいました。
化石というのはちょっと
酷いと思いますけど、
これは1つの象徴です。
地元のニーズに大学は関心を示してこなかった、
そういうことだと思います。
日本の大学は、地域や社会に十分、
門戸を開いてこなかったのではないか
ということを反省しなくてはいけません。
アメリカの場合は
オープンで、
学外の優秀な人達を大学の中に入れて
教員になってもらったり、
研究者になってもらったりということが
良くあります。
そして逆に大学の教員が、
ベンチャーを興すために社会に出て、
2-3年経って戻ってくる
ということも良くあります。
このような、出入り自由で、
オープンな文化というのが
日本の大学と違うところで、
そのようなことが、
大学が、地域に貢献していると
いうことの背景に
なっているのではないかと思います。