2008年03月05日 08:00
ベンチャーファイナンス(2)(ベンチャー企業/五十嵐)
今日は、ベンチャーキャピタルの
モデルを更に詳しくご紹介します。
視聴者の皆さんは、
銀行というとイメージしやすいでしょうが、
ベンチャーキャピタルというと、
会社を興した人、
あるいは、株式上場したベンチャーキャピタルの株を
お持ちの方人ぐらいしか、
ご存知ないと思うので、
歴史も含めて詳しくお話していきます。
■ベンチャーキャピタルの歴史
まずベンチャーキャピタルの
歴史についてお話しします。
世界最初の
ベンチャーキャピタルは、
1946年にアメリカで誕生しました。
ボストン連銀総裁の
ラルフ・フランダースという人が、
ハイテク系の中小企業を育成する為に
多少連銀のお金を
出しても良いのではないか、
ということを発案しました。
ところで1946年というと、
第二次世界大戦後直後で、
大戦中のボストン周辺では、MITを中心に、
軍事目的の最先端の技術開発が
徹底的に行われていました。
そこで、ハーバード大学の
ビジネススクールの
ジョージ・ドリオ教授は、
この最先端な軍事技術の商用化、
事業化ができないかと
考え始めていました。
こうしてドリオとフランダースの思惑が一致して、
生まれて間もない小さい会社、若い会社に
投資をしてみようじゃないか、
という発想で生まれたのです。
こうして、
アメリカリサーチアンドデベロプメント
(ARD)という、
世界で初めてのベンチャーキャピタルが
誕生しました。
ARDは、1946年から様々な
試行錯誤を繰り返しながら
ベンチャー投資を行っていました。
ところが、世界で初めての試みです。
ノウハウも知識も全くなく、
大変苦労したようです。
ところが、1957年にMITの卒業生で
IBMを飛び出したケン・オルセンへの投資が、
ARDに大きな成功をもたらします。
ケン・オルセンの会社は、
当時ボストン郊外の
毛売り物工場の廃屋でスタートし、
コンピュータービジネスを始めるとの話でした。
このオルセンの会社に、
創業資金として7万ドルを投資しました。
7万ドルですから約800万円です。
その後、この会社は順調に成長を遂げ
1971年に株式公開に至りました。
実はこのオルセンの作った会社は
デジタルイクイップメント(DEC)であり、
1971年には、IBMに次ぐナンバー2の
コンピューター会社になっていました。
残念ながら、今から数年前に買収されてしまって、
ご存じない方も少なくなった方も多いと思いますが、
一時代を築いた会社です。
こうして、投資した7万ドルが、
その5千倍の約385億円になったのです。
DECの成功が契機となり、
二つのことが起こりました。
第一に、DECをお手本として、
MITやハーバードの卒業生が
こぞってボストン郊外に
ベンチャーを沢山作りました。
以前にお話ししましたが、
ボストン公開の環状線ルート128沿いに
たくさんのベンチャー企業が
集積するようになりました。
第二に、投資が5千倍になるようなビジネスは
金になるということが明らかになって、
ベンチャーキャピタルが沢山できました。
ですから、もしもARDの成功がなかったら、
ベンチャーキャピタルが
ベンチャー企業の主要な資金の出し手に
ならなかったかもしれません。
■ベンチャーキャピタルのファンド
続いて、ベンチャーキャピタルファンドについて
見ておきましょう。
日本では会社組織が一般的ですが、
ベンチャーキャピタルというのは
ファンドで運営される場合が多く、
そこから、「お金の受け皿」だというふうに
考えた方が理解しやすいと思います。
ベンチャーキャピタリストの仕事は
いくつかあります。
まずベンチャーキャピタルファンドに
お金を集めることです。
それからそのお金を集めただけじゃ
全然儲かりませんから、
自分が発掘してきたベンチャーに投資をして、
その上で自分のノウハウを提供して
企業を急成長させることです。
ベンチャーキャピタルに限らず、
他もファンドでも一緒ですが、
お金を集めたいと思ったときに、
普通は機関投資家と言われる生命保険会社や、
年金基金、退職金基金から
ファンドかへの投資を受け入れます。
例えば100億円のファンドを集めるとします。
私がベンチャーキャピタリストだとしたら、
100億集めるのに100社に
投資を受けたくはありません。
なぜかと言えば、機関投資家に対する
運用責任がありますから、
運用が上手くいかない場合には、
一社一社、100社に対して
理由を説明に行かなければなりません。
出来るだけそのような時間は少なくし、
本来的業務である投資と育成に
注力できなくなります。
ですから、機関投資家の数は少なく、
かつ、よくベンチャーキャピタル業界のことを
知っている人にお金を出してほしいと思います。
■管理報酬
ところで前回お話したように、
ベンチャー企業が成功するまでに
タイムラグがあります。
しかしベンチャーキャピタリストも
生活していますから、
給与も必要ですし、
オフィスも借りなくてはいけません。
ところが成功っていうのは
後から付いてきますから、
すぐにはお金が手当てできません。
そこで、管理報酬を設定します。
例えば100億円で5年間のファンドの場合、
管理報酬はいくらくらいなるかというと、
大抵3%~5%です。
キャピタリストの優劣はかなり大きいです。
優秀なキャピタリストであれば、
5%以上の場合も多いです。
出来の悪いキャピタリストだと、
1%でも多すぎるということになりますね。
例えば、管理報酬は年3%で
5年間のファンドですから、
100億で3%×5年=15億円ですね。
キャピタリストは、100億集めて、
初めに管理報酬として、
15億を確保します。
活動費として必要ですからね。
100億-15億ですから、残りは85億円、
85億円をベンチャーに投資を
行うこととなります。
何を言いたいかというと、
投資を始めるときから、
15億円のマイナススタートしなくては
いけないということなのです。
管理報酬が高いということは、
マイナス幅が広がります。
ですから、
よっぽど自信のあるキャピタリストでなければ
管理報酬を大きくできないという背景もあります。
その上で、キャピタリストが
「これは!」思う会社に
どんどん投資をしていきます。
3年位までですべての投資を完了させます。
良いと思って、
投資をしてもそれほど簡単ではありません。
倒産する会社、回収の見込みが立たない会社が
徐々に増えていきます。
結果的に、ベンチャーキャピタルファンドは、
設立当社からどんどんファンド元本を割り込み、
キャッシュフローは沈み込み、
ファンド年限の5年が近づき
急速に元本を回復し、余剰も生まれ
最後にギューンと一気に利回り上がって来ます。
「J」カーブを描くとよく言われますが、
ベンチャーキャピタリストは、
ものすごくタフな精神を持っていないと
勤まりません。