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2010年01月05日 10:00

BIS規制の日本の銀行 (ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

今日は、昨日説明しましたレバレッジとも関連した、銀行の自己資本規制、
BIS規制と、日本の銀行の係わりについてお話をします。

BIS規制というのは、銀行がその自己資本に対して
リスクのある資産を過大に抱えることがないように
規制する国際的な合意です。
つまり銀行がレバレッジをあまり高め
過ぎないようにするための規制です。

こうした規制は従来より、先進各国中心にそれぞれに採られていました。
しかし、1980年頃を中心に各国で金融の規制緩和が進んで、
国際間の資金移動が非常に活発化したことから、
どこか一国の金融市場で銀行が支払い不能に陥ると、
その影響が国内の別の銀行のみならず
他の国の銀行の破綻にまでつながりかねないという
リスクが高まってきたことから、
1988年にバーゼル銀行監督委員会というところで、
国際間のルールとして合意されたものです。

日本にも銀行に対する自己資本規制自身はあったのですが、
その基準の内容は随分違っていました。
日本では準備段階を経て、1992年から
このBIS規制が適用されています。
具体的には、自己資本を分子とし、リスクのある
資産を分母とする分数の計算で、
国際業務を行う銀行は8%、
国内業務のみを行う銀行は4%を
それぞれ下回らないようにするというものです。
この規制は、これを決めたバーゼル銀行監督委員会が
スイスにある国際決済銀行(Bank for International Settlements)で
開催されていることから、そこから名前をとって、
BIS規制と呼ばれるようになりました。

規制の試行前の日本はと言えば、いわゆるバブル経済下にありました。
遅れていた金融の規制緩和が徐々に進みつつあり、
日本の銀行はお互いに規模を競って国内外でレバレッジを
高めつつ活発に投融資を行っていました。
その結果、邦銀のプレゼンスが海外のマーケットで急速に高まり、
警戒感を持たれていた中で、こうした国際的な規制が動き始めました。
そのため、この規制は日本を狙い撃ちにしたものという
受け止められ方も当時ありました。

日本の銀行にとって、この規制のハードルは高かったわけですが、
企業と持ち合い保有をしていた株式の含み益や
企業から借り入れた劣後ローンを自己資本に参入するなど、
日本の銀行の特殊事情も若干勘案してもらうような形で
何とか達成にこぎつけました。
ある意味では、この規制の導入は、
当時の日本のバブルを若干なりとも
抑制する効果があったとも言えると思います。

このBIS規制の8%とか4%とかという数字は、
バブル崩壊後不良債権を抱えることになった日本の銀行処理の
尺度としても重要な意味を持ちました。
つまり、自己資本比率8%を維持できない銀行は、
他の国際業務を行う銀行との合併、
あるいは純粋国内業務への転換を余儀なくされました。
さらに、4%も維持できない銀行は、他の銀行との合併、
あるいは国有化という展開をたどったわけです。

さらにバブルの崩壊で株価も大幅に下落したことから、
BIS規制は日本の経済界の株式の持ち合い構造にも影響を与えました。
規制導入時には含み益という形で、
自己資本比率に貢献した銀行の保有株式も
逆に銀行の経営の不安定化要素と見なされるようになりました。
時価会計の考え方の広まりもあって、自己資本比率安定化のためにも、
持ち合い株式の解消の必要性が指摘されました。
その結果、実際に持ち合い解消への動きが見られました。
しかし、その後の株式相場の落ち着きや、
敵対的M&A対策として銀行に安定株主になってもらうという
企業側の要請もあり、結局はあまり進展しないままここまで来ました。

BIS規制自身は、例えば為替リスクなどの市場リスクや、
銀行の実際の業務処理から発生するリスクなども含める形で
より精緻化され、日本でもそうした
新BIS規制に2007年から移行したところです。

しかし、今回の金融危機の発生を受け、
再び新たな規制の枠組み作りが検討されています。
その中には、先程の分数計算の分子である自己資本の中身として、
劣後ローンとか優先株とか特殊なものではなくて、
議決権を持つ普通株、留保利益を重視することや、
不況時にどうしても自己資本比率が下がることから、
好況時にこの比率のハードルを若干引き上げ、バッファを設ける形で
全体の水準の引き上げを図ることなどが含まれています。

邦銀は、この新たな規制の動きに対して、
これまで余り進んでいない保有株式の処分を
進めていかなければなりませんし、
自己資本中の普通株部分の充実が課題となります。
そのため、邦銀の中にはこの規制の変更を先取りして
大型増資に踏み切るところも出てきています。

ただし、こうした規制強化を急ぎすぎると、
銀行は融資資産の圧縮に向かうことになり、
その結果生じる貸し渋りで、金融危機・経済危機後の
景気回復の障害となりかねません。
そのため、制度変更については段階的に時間をかけて
進めるなど慎重な対応となるよう、
バーゼル銀行監督委員会等で協議がすすめられています。

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