2006年07月27日 08:20
名画の著作権は何年間保護される?
~格安DVD販売差し止め裁判のゆくえ~ (産学連携/高田)
「ローマの休日」など、名画の格安DVD販売に対し、
差し止めできるのか、できないのかという裁判で、
先日、東京地裁が判決を下しました。
今日はこのことについてお話ししたいと思います。
■ 東京地裁の判決
「ローマの休日」などの
格安DVDを販売していた会社を、
映画の著作権を持っている
パラマウントピクチャーズという映画会社が、
「著作権保護期間中であり、
格安DVD販売は違法」ということで訴えました。
これに対する東京地裁の判決は、
著作権保護期間は既に満了しているということで、
パラマウントの申し立てを却下、
格安DVDを販売してよろしいというものでした。
ただ、判決の理由にはよく分からないところがあるのです。
■ 事の発端は著作権法改正による保護期間の延長
そもそも法人が持っている映画などの著作権は
保護期間が50年と定められていました。
「ローマの休日」は1953年に封切られていますから、
その翌年から50年間、
ちょうど2003年度に満了することになっていました。
ところが2004年の1月1日に改正著作権法が施行され、
保護期間は一律70年と、20年延長されました。
DVD販売会社は
「1953年の作品は、2003年12月31日で著作権は切れた」
と主張し、DVDを販売していました。
一方のパラマウントは、
「著作権保護期間は70年に延びた」
と主張しています。
この判断は、文化庁が出した見解に基づいています。
つまり、
「1953年公開作品の著作権保護期間が終了する
2003年12月31日24時と、
改正法施行の2004年1月1日午前0時は同時なので、
53年作品には改正法が適用されて
保護期間が20年延長される」
というのです。
私個人的には、
この見解を理解するのは難しいと感じるのですが・・・。
このためパラマウントピクチャーズは他社に対し、
「皆さんはまだ
『ローマの休日』を販売する権利は
持っていませんよ。」
と警告を出し、そのうちの一つが
今回の裁判に至ったというわけです。
■ 米国著作権法は『ミッキーマウス保護法』?
この問題は非常にややこしいのですが、
そもそも、ゲームや映画、アニメなどの
コンテンツビジネスが
非常に大きなビジネスとして
成長していることが背景にあります。
当然のことながら、映画会社は
自社の良質なコンテンツ(ドル箱?)を
簡単に失いたくないと考えるでしょう。
このことが大きな要因となっているのです。
アメリカなどでは
非常に面白い現象が見られます。
アメリカの著作権法はよく
『ミッキーマウス保護法』などと言われたりします。
これは、ミッキーマウスの著作権が切れそうになる度に、
アメリカの著作権法が改正になって
保護期間が延びているためです。
ミッキーマウスが最初に公開されたのは
1928年だというのが定説です。
当時アメリカの著作権保護期間は56年だったので
1984年には切れるはずでした。
けれど1970年代終わりに法改正され、
保護期間が75年に延びて
ミッキーマウスの寿命は2003年にまで延びました。
ところが90年代の終わり頃にさらに法改正があり、
保護期間が95年と、さらに20年延びました。
結局、ミッキーマウスの寿命は
(今のところ)2023年までということになっています。
著作権(コンテンツ)の保護というのは
ミッキーマウスを代表とする
ディズニーがリードしていると言っても
過言ではないかも知れません。
業界では、ディズニーやハリウッドなどの
映画会社がアメリカ議会に対し
強力なロビー活動を行っていることは有名な話です。
■ コンテンツは誰のものか?
コンテンツ産業振興については
日本でも経済産業省、文化庁といったところが
熱心に行っていますが、
日本のコンテンツ産業の規模とは
現在11兆円程度、
GDPで言うと全体の2%程度です。
政府は、2010年にはこれを17兆円へと
拡大しようという計画を進めています。
この産業振興を担うのは良質なコンテンツを作り、
それを社会に普及させる映画会社や製作会社でしょう。
彼らの主張は、海賊版なんていうのはもってのほかで、
いいコンテンツがきちんと保護されつつ世の中に普及し、
創作者に利益が還元されるようにしていくべきだ、
それが新たなクリエーターの育成にも繋がるのだ、
というものです。
一方、消費者の一部には、
もっとコンテンツに身近に
触れるようにすべきだという声もあります。
創作意欲というものも、
創作者が良質なコンテンツに
もっと身近に触れることによって
湧くものなのだというのです。
そして、そのことが
幅広いクリエーターの育成創出に繋がる
ということで、著作権の保護期間の延長に
反対している人も多くいます。
結局のところ、
良質なコンテンツは誰の財産なのかという問題です。
映画会社など法人の財産だという考えと、
一定期間を過ぎれば広く社会全体の財産だ、
という考えがどこでバランスするかは、
これからも議論が続いていくものと思います。