2006年12月01日 08:20
明星食品のTOB (財務/村藤)
今回は、明星食品のTOBの話をしていきたいと思います。
■ スティールパートナーズによる敵対的TOBの実施
現在、日清食品(以下日清)が
明星食品(以下明星)の株主に対して
TOBを実施しているわけですが、
日清が出てきたのは後になってからです。
最初にTOBを実施したのは
スティールパートナーズ(以下スティール)という
アメリカの投資ファンドで、
これが今回の明星を取り巻くTOB合戦の火種となりました。
スティールはもともと明星株の
23.1%(今年3月末時点)を保有する筆頭株主です。
3年ほど前になりますが、
明星の創業家である奥井家から
明星株を買い取ったことで筆頭株主となっています。
スティールは2005年末より、明星に対して何度か
MBO(経営陣による自社買収)を行うように提案しています。
しかし明星側がこれを拒否したため、
今回TOBを持ちかけたのですが、これに対しても、
企業価値、株主の共同の利益を高めることにならない
として明星が反対を表明したため、
敵対的TOBになったということです。
■ 日清食品による友好的TOBの実施
TOBへの対策を検討するため、明星は
メインバンク系の三菱UFJ証券をアドバイザーに指名しました。
そして資本提携交渉先として選ばれたのが
業界最大手の日清で、三菱UFJの仲介で提携交渉を進めたのです。
その結果、明星と日清は資本提携で合意し、
スティールの敵対的TOBに対するホワイトナイト(白馬の騎士)として、
日清が友好的TOBを実施するに至りました。
尚、各社の提示した買い付け価格ですが、
スティールが700円であったのに対し、
日清は870円となっています。
この結果、日清がTOBに成功しそうな気配となりました。
■ 明星食品の事情
明星は、1994年に79年の株式上場後
初めての経常赤字に転落、その後、
工場再編等のリストラを進めるわけですが、
この頃から創業家出身の役員が次々と退任していきます。
そして、99年12月に創業者の長男の
奥井順太郎取締役が退任したことで、
経営陣から創業家の人材が姿を消すことになります。
既述のように、03年11月にスティールが
創業家の奥井家から約411万株を
平均300円以下で買って筆頭株主になったわけです。
明星の永野博信社長が「当初は有意義な助言をくれた」
と語っているように、はじめのうちは
比較的良好な関係にありました。
しかし、MBOを持ちかけるようになったあたりから
話があやしくなってきたわけです。
スティールのTOBに対し、
ファンドに買収されることを嫌悪した明星はこれを拒否。
アドバイザーに指名した三菱UFJ証券の助言により、
日清によるTOBに賛同しました。
明星内部では、競争相手である
日清による買収に反対する声もありましたが、
ファンドのスティールよりは
業界仲間の日清の方がいいのではないか
という結論に達したようです。
ただし、明星は必ずしも日清との統合までは
考えていないように見える点は注意が必要です。
■ TOB合戦の決着
スティールのTOBに対して
日清食品がより高い買い付け価格を提示しました。
これに対し、スティールがどう出るのか注目が集まりましたが、
スティールが反撃に出るというようなことはありませんでした。
日清食品が870円でTOBを実施した段で、
スティールとしては、まず日清に対して売却し、
売却益を得るという手が考えられました。
平均すると560円程度で購入しているので、
870円で売れば1株当たり310円程度の利益が見込め、
全体として約30億円程度の儲けを出すことができます。
売却しないで逆に株を購入するという手も当然ありました。
つまり、日清の提示した870円を上回る価格を提示し、
明星を手に入れるという方策もあったわけです。
ただし、業界トップの日清食品に対抗して
明星を買収した後にどうするのかというと、
そこはやはりファンドです。長期に渡り
明星株を持ち続けるということはなさそうです。
そういう意味では30億円儲けて、
とりあえず話を終わるというのが
一番ありそうなシナリオに見えます。
11月27日にはスティールのTOB期間が終了し、
スティールは翌日28日に明星に対する
敵対的TOBへの応募がゼロであったことを発表しました。
日清が870円で買うといっているところで、
700円で売る株主がいるわけはありませんね。
今後の行方についてですが、上記のように、
スティールが日清のTOBに応じる形で
売却益を得る公算が大きいと考えられます。
そうなればTOBとしては失敗でもファンドとしては成功です。
■ 注目される敵対的買収の動き
スティールは、3年くらい前にも
ソトーやユシロ化学というような会社向けに
敵対的TOBを起こして注目を浴びています。
かつての村上ファンドと並び、
日本で敵対的買収を仕掛けるファンド
ということで悪名を轟かせています。
スティールは明星以外にも
色々な企業の株式を大量保有しています。
例えばアデランスの24.5%、サッポロホールディングの18.6%、
ノーリツ社の14%、江崎グリコの13.45%、ブルドッグソースの10%、
キッコーマンの5%、モスフーズの4%などです。
実は今回TOB合戦で敵対することとなった
日清の株式も6%ほど保有しており、
スティールとしては、日清が明星株を買ってくれて、
なおかつ日清の株価まで上がるのであれば
それも悪くないという状況にあります。
こういったことからも、
今回はとりあえず日清に売却することで
TOB合戦に終止符が打たれるものと考えられます。
結果として加工食品業界は再編されることになりましたが、
これは、サンヨー食品がエースコックを
傘下に治めて以来の大きな再編と言えます。
今後、再びスティールがあちこちで
敵対的買収を仕掛けるということは十分考えられます。
実際、スティールに株を保有されている企業では、
明星の次はどこかという不安が漂いはじめました。
スティールに限った話ではありませんが、
こういった敵対的買収の動きというのは、
業界再編との絡みもあり、
今後ますます注目されていくことでしょう。