BBIQモーニングビジネススクール > 産学連携から見るタミフル問題(後半) (産学連携/高田)

2007年05月01日 07:40

産学連携から見るタミフル問題(後半) (産学連携/高田)

昨日は、産学連携の過程で
利益相反状態は往々にして起こりがちだ
ということをお話ししましたが、
今日は「どうすればよいのか?」、
そのマネジメントについてお話ししたいと思います。


昨日の話を
簡単におさらいしますと、
産学連携における利益相反とは、
例えば、大学のある教授が企業と共同研究を行うとき、
大学の教授という立場では”真理の探究“が求められるので、
常に客観的なデータに基づいて結論を述べる必要がありますが、
一方で、その研究を行うために
企業から巨額の資金提供を受けていたとすると、
ひょっとしたら企業に有利なように
実験データを解釈してしまうこともあるかもしれず、
この問題を未然に防止するマネジメントが
必要であるということでした。


■実験データのオープンな検討
このようなケースの場合、
どうやってマネジメントすればよいのでしょうか?
最もシンプルなのは、得られた結果が
本当に真実であるかどうかを証明するために、
実験結果をキチンと学会や論文で
社会に公表して正しさを問う、
という方法が挙げられます。


先日、韓国のソウル大学で
オオカミのクローンを誕生させることに
成功したというニュースが流れ、
それが真実かどうかの議論が白熱しましたが、
研究成果を掲載した雑誌も含めて、
実験結果を公表してオープンに議論することは、
重要なマネジメント手段の1つです。


では、今回のタミフルの件は
どうあるべきだったのでしょうか?
残念ながらマスコミの報道を見ている限り、
研究班がどのようなデータに基づいて
“タミフル服用と異常行動との因果関係”を
証明したかという内容に触れた報道は
ほとんど見あたりません。


“製薬企業が研究班メンバーに寄附をしていたこと”
+ “研究班が『因果関係はみられない』という結論をだしていたこと”
= “寄附を受けていたことに影響された誤った結論であり、
研究班メンバーと厚労省はけしからん!”

という単純な図式だけが
一人歩きしたように見えます。
これは、決して適切な
利益相反マネジメントとは言えません。


■利害関係者を排除する難しさ
今回のマネジメントのポイントとしては、
①そもそも利害関係者を研究班に含めない
→つまり、厚労省が研究班を組織する段階で、
製薬企業との関わりが強いと
みなされる研究者を予め排除しておき、
判断の客観性を保てるようにしておくことは、
利益相反マネジメントの観点から重要です。


しかし、これは現実的には
なかなか難しい場合もあります。
今回の報道が過熱した最中に
ある医学部の先生と話をしましたが、
日本では専門領域毎の大学研究者の層が
欧米に比べて極めて薄いため、
製薬企業と関わりのある研究者を外していくと
必要な人数を集められないことも
起こりうるらしいのです。


また、製薬企業から
寄附を受けたのは大学であって
教授個人が所得を得ていたわけではないので、
寄附金が、結果的に
研究班の結論をねじ曲げるほどの根拠となりえたのか、
今ひとつ明確にわかりません。
いずれにせよ、出来ることであれば
最初から利害関係者を排除した
研究班のメンバー構成としておくほうが
ベターであることは明らかです。


■EBMの遅れた日本の医療
②客観的なデータにもとづいて判断する
→つまり、寄附金の存在によって
判断に手心が加えられたか否か、
という点を明らかにする意味でも、
問題が表面化した段階で、
データの統計的な処理や判断の妥当性について、
例えば厚労省が代替のグループ
(もちろん、製薬企業と関係ない研究者から構成)
を組織し、研究班の当初の判断の妥当性について
客観的なデータに基づいて検証することが必要となります。


医療の世界には
EBM(科学的根拠に基づいた医療)
という概念がありますが、
日本はアメリカなどに比べて
EBMの面で遅れていると言われており、
今回のタミフルの件を、“疑わしきは罰せよ”といった
単純な論調で処理するのではなく、
むしろEBMの概念をより広く普及させるための
絶好の機会ととらえるべきだったと思います。


そのうえで、薬の投与には
何らかのマイナスリスクを伴うことを
国民がきちんと理解し、
そのリスクとベネフィットについて
バランスのとれた成熟した判断ができるように、
国民の側にも成長が求められます。


■マスコミに期待される役割
「リスクがあるから
投与を止めましょう」というだけでは、
本当に助かる患者さんが助からないことにもなり、
一方でやみくもにリスクテイクをしてしまうと、
甚大な副作用被害を招きます。
でも、どこかに社会全体が
求めるバランス点があるはずで、
マスコミには、むしろ
EBMの普及という点について
国民的議論を喚起してもらいたいものです。


今回のタミフルの件では、
産学連携において重要な利益相反マネジメント
という問題がクローズアップされましたが、
さらにその根底にはEBMの普及という
大きな問題が横たわっていることを
理解する必要があります。

産学連携から見るタミフル問題(後半)(産学連携/高田)MP3ダウンロード

前の記事へ 次の記事へ


ブログ&ポッドキャスト検索

ページの先頭へ戻る