2007年05月03日 07:40
アントレプレナーシップ(ベンチャー企業/五十嵐)
■イノベーションの担い手としての起業家
今回はイノベーションの担い手としての、
「起業家」について話します。
シュンペーターの理論によれば、
イノベーションが起これば
資本主義は繁栄するということは
前回説明したとおりです。
このイノベーションの担い手が、
アントレプレナーシップ(Entrepreneurship)を持つ個人、
すなわちアントレプレナー(Entrepreneur)です。
彼は、アントレプレナーが増えないと、
資本主義長続きしないと結論づけています。
ここで、敢えて
アントレプレナーと
英語(語源はフランス語)で説明するのは、
邦訳ではアントレプレナーシップは、
起業家精神と訳されてしまい、
精神面が強調されています。
しかも、この「キギョウ」の字には
「起こす業」の「起業」を使うわけですけども
「企てる業」の「企業」が当てられることも多く、
随分誤用や文字からくる印象の違いが見られるので、
返ってアントレプレナーシップとした方が適切かも知れません。
■欧米におけるアントレプレナーシップの定義
先に欧米のアントレプレナーシップの
定義をいくつか紹介します。
ピーター・ドラッカーは、
アントレプレナーシップとは
「変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する」
ものと定義付けています。
最近では、
スコット・シェーン(2000)が、
アントレプレナーシップとは
「機会の源泉」、「起業プロセス」、「個人」の
3つから構成されるとし、
機会というのはビジネスチャンスの源泉であり、
事実として存在するのだと述べています。
彼の理論によれば、ビジネスチャンスというのは
所与の事実として存在する物というふうに捉えます。
これが最初の「機会の源泉」です。
次に「起業プロセス」というのは、
その事実としての機会の源泉を
3番目の個人が見いだすことから始まり、
それを自分で価値評価をし、
その価値評価をした上で、
自分が実行するかどうかを決めて、
それから本当の意味での起業行動に移ると、
こういったような段階を追って進むことです。
そして、「個人」については、
具体的な例を出して説明します。
前回も少しインターネットのお話をしましたけども、
インターネットの発明というのは一つの事実であり、
これが機会の源泉です。
そのインターネットという発明に接した場合に、
ある人はアマゾンのようなインターネットショッピングの
モールをやろうというふうに捉えるかもしれません。
またある人は、インターネットの検索のサービスが
ビジネスになると考えるかも知れません。
そしてまたある人は、インターネットのブラウザーソフトが
売れるようになるというふうに捉えるかもしれません。
つまり、インターネットの発明というのは
1つの源泉だった訳ですが、
起業というプロセスから言うと
3つのタイプが少なくとも誕生しています。
ここの個人が、個人のそれまでの経験、
例えば学校での勉強の経験、仕事の経験、
またはどういった相手と繋がりがあったかによって、
その機会が認識できるかどうかというのが随分変わってきます。
■アントレプレナーシップにおける「行動」の重要性
二つの定義を示しましたが、
アントレプレナーシップとは
単なる精神論ではなく
「行動」が伴うものだということを
まずご理解いただきたいと思います。
とにかく思ったことを行動に移すことが大切で、
思っている方は沢山いらっしゃるけれど、
そこからまず行動してさらには成功するのは
1,000に3つといわれているのがベンチャー企業です。
■アントレプレナーシップという概念の広さ
また、アントレーナーシップという概念が、
単なるベンチャー企業創業よりも、
より大きなものであることがわかると思います。
例えばドラッカーの定義を使うと、
変化を探して、変化に対応して、
変化を機会として利用することを説いているだけで、
別にベンチャーを起こせとは一言も言っていません。
スコット・シェーンの定義も一緒です。
スタンフォード大学のビジネススクールの先生が
NHKスペシャルで言っていたことですが、
牧師は牧師なり、大統領は大統領なり、
夫婦は夫婦間なりのアントレプレナーシップがあります。
3月にフランス、ドイツを訪問して
シュトットゥガルドとグルノーブルの大学・ビジネススクールで
アントレプレナーシップのコースについて
説明を聞いたときも、「私たちのコースは、
ベンチャー企業をたくさん作ることを目的としているのではなく、
アントレプレナーシップを持った人材を育成することであって、
そのような人材が大企業や公官庁にいても全然問題ではない」
と説明していました。
ですから、むしろ広い目で
アントレプレナーシップ、起業家精神、
起業家行動をというものを捉えていただき、
是非ともリスナーの皆さんには
アントレプレナーシップを持って頂きたいと思っています。