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2007年05月09日 07:00

ベンチャー企業の必要性と日本の現状(五十嵐/ベンチャー企業)

前回までは、学問的な視点から
アントレプレナーシップを確認してきましたが、
今回から数回は、少しマクロの視点で実際の数字を示しながら、
何故、ビジネススクールや大学で、
アントレプレナーシップやベンチャー企業論に
講座やコースが開設されたのかを
実務への橋渡しとして4回程度でお話します。


リスナーの皆さんの中には
「別にベンチャー企業なんて必要ないのではないか」
「ベンチャー企業なんて起こす必要がないのではないか、
大企業で十分だ」と考えてらっしゃる方が
いらっしゃるかもしれません。


■1980年代のシリコンバレーの例
ベンチャー企業の必要性を最も端的に示しているのが、
1980年代以降のアメリカ西海岸のシリコンバレーの例です。
成長企業は新しい富の創造の源泉です。
2001年4月にジャバノビッチ(Jovanovic,2001)が指摘したように、
市場価値で見たアメリカの上位四位までの企業は設立20年未満でした。
この4つの企業とは、マイクロソフト、
シスコシステムズ、MCI、デル・コンピュータであり、
4社の企業価値の総付加価値額はアメリカのGDPの13%に匹敵します。


これらの企業は、創業後、
それまでの大企業を凌駕して、急成長を遂げました。
現在は世界を代表する大企業となってはいますが、
元々は、これまでお話ししてきた
一人あるいは複数の人間のアイデアから始まったものなのです。


■SBAの調査
アメリカのSBA(Small Business Administration:中小企業庁)の調査では、
イノベーションを実現した企業のうちの半分は
従業員100名以下の中小企業でした。
同様に、雇用に関しても、
中小企業が雇用を創造し、大企業は雇用を削減しており、
大きな貢献を示しているのは、
大企業ではなく中小企業であるとの報告もあります。
最近の日本の大企業でのリストラの状況を見ても、
この先大企業が雇用を生んでくれるようには思えません。
雇用創造の面をとってみてもベンチャー企業に対する期待は
日本でも重要だということがご理解いただけると思います。


■フィンランドのノキア
世界レベルでキー・プレーヤーとなる一企業が、
その国の成長軌道を根本的に決定することもあります。
フィンランドにおけるノキアの例が典型的です。
ノキアは、1990年代初めから半ばにフィンランドが経験した
深刻な景気後退から同国が立ち直る能力を高める点で、
主たる役割を1社で演じました。


■アントレプレナーシップの国際的な競争力への影響
今話したように、アメリカ、フィンランドに限らず、
イギリス、フランス・ドイツなど、世界各国で、
シュンペーターの主張を支持する現象が起きています。
アントレプレナーシップ(起業家活動)が活発か否かが
国際的な競争力に影響を持つ、
つまりアントレプレナーシップを活発化していかないと、
国の将来は危ないというふうに
各国の政策担当者が考えるようになってきました。


そこで、世界の著名な調査機関が
アントレプレナーシップという視点も含めた
国際競争力ランキングを発表するようになっています。
2例ほど示しますと
OECDは、IT分野、イノベーション分野、ベンチャー分野の
3分野について加盟国30カ国を5段階で評価しています。
成績と同様、「5」が最高点で、「1」が最低ということになりますが、
日本は、ベンチャー分野の中の「起業実績」では「1」、
「資金調達」では「2」という低い評価が与えられています。
スイス・ローザンヌのIMDによる
2001年の世界競争力ランキングでも
日本のアントレプレナーシップや開業の水準の低さについて
49カ国中最低の評価を与えられています。


今後、OECDやIMDの最新の評価が出た場合に
コメントしていきたいと思いますが、
このように世界各国が
アントレプレナーシップの活性化の
心血を注いでいる状況の中で、
日本の状況は最低に近い水準にあることは
憂慮すべき事実と言えます。

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