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2007年05月15日 07:40

イノベーション・マネジメントの課題 (イノベーション・マネジメント/永田)

昨日は第1回目という事で、
イノベーションについて概略的なことをお話しました。
今日はイノベーションをマネジメントする上での、
課題についてお話ししたいと思います。


■イノベーションのプロセス
イノベーションの実現というのは
極めて不確実性が高いものです。
確立された技術体系の下で
生産計画を行うのとは違って、
一定のインプット、
つまり研究開発費をかけたからといって、
発明などの成果をどれだけ得られるのかは、
そう簡単に予測することが出来ません。
開発のプロセスに色々な要因が
関与してくる事になるわけです。


ですから例えば
政府がイノベーションの創出を、
目標に掲げて政策プランを策定するにせよ、
あるいは、企業がイノベーションを
成長戦略として打ち出していくにせよ、
やはりそのプロセスを深く理解した上で
どういう点に配慮した政策展開なり
マネジメントが重要なのかという事を
考えておく必要があるということになります。


私たちは普通、
イノベーションというものを、
企業が基礎研究を行って、
その研究成果を何かに応用する事を考えて、
具体的な新しい製品とか
新しい工程に具現化して生産活動を行い、
最終的に市場で利益を上げる、
このような時間に沿った過程として
理解しがちであると思います。
このような捉え方の枠組みを
リニアモデルと呼びます。


■イノベーションのきっかけ
ところが、
現実のイノベーションプロセスというのは、
様々な事例をふまえて考えると、
ただちに気が付くことなのですが、
そのように単純なものではなく、
基礎研究以外にも色々なところに起点があるということが
今日では知られています。


例えば、市場における
潜在的なニーズを企業が感知して、
これに対応するような次世代の製品開発を行うこと。
つまり市場が起点になるということがあります。
また、完成品の製造過程で何か不具合が発見され、
その問題を解決するために、
1つ前の詳細設計の段階に情報をフィードバックする。
そこでより完成度の高い製品を
生み出すきっかけが得られる
といったこともあります。


もちろん研究というのは
大変重要なファクターではありますが、
企業としては単に研究を効率的に進め、
そこに資源を配分するというだけではなく、
市場に近い川下からの情報の流れに注目して、
それを円滑に新しい製品の開発などに
反映していくという取組が
極めて重要であるということがいえます。


■イノベーションの専有可能性
さらにイノベーションプロセスの
難しい問題の一つは、
イノベーションを実現する機会が
企業によって捉えられたとしても、
それだけでイノベーションが促されるとは
限らないということです。


企業は当然ながら
イノベーションを実現することによって
利益が得られることを期待します。
しかし、ある企業が実現したイノベーションから
得られる可能性のある利益は、
その全てが当該企業によって
回収されるとは限らないのです。


なぜなら、イノベーションというのは、
最初に実現する為には
巨額の投資を必要とするとしても、
それを模倣することは極めて
簡単な場合もあるからです。
そうすると、そのイノベーションから
得られるはずの利益の一部が
ライバルに流出することになってしまいます。


それから、またイノベーションは
単に新しい技術的な知識が取得されれば、
それだけで実現されるわけではありません。
当然、市場で利益を得る過程では、
例えば生産設備や販売チャネルなどといった、
いろいろな補完的な資産が必要になります。


当該企業がそういう補完的な資産を、
全て内部に統合して持っている訳ではない場合は、
それらに市場でアクセスしなければなりません。
しかし、それらが極めて特殊な
性格を持つ資産である場合は、
競争的な条件でアクセスすることが出来ませんから、
その利益の一部がサプライヤーなどに
流出するということも起こるわけです。


ですから、非常に競争圧力が強くて、
潜在的なイミテーターが
沢山存在しているような市場では、
企業がイノベーションを追求することには
大きなリスクが伴うことになります。


■競争優位の持続性
イノベーションから得られる利益を
企業が自ら回収できる程度のことを
「専有可能性」という言葉を使って表現します。
企業が得られる利益の程度が非常に低い
すなわち専有可能性が著しく低い場合には
企業はイノベーションを
追求していこうとはしなくなってしまいます。


ですから、言い換えれば、
イノベーションをマネジメントしていく上での
重要な課題の一つは、
その利益の専有可能性を、
どのようなメカニズムで高めていったらいいのか
ということにあると言えます。
専有可能性が十分に高くない状況が続きますと、
ある市場において最初にイノベーションを実現して
ファーストムーバーになった企業であっても、
その製品のライフサイクルの進展にしたがって、
競争優位を喪失するということがしばしば起こるわけです。


例えば、1番最初に
新製品を市場に出した企業が、
長期的に競争優位を持続させている事例は
以外なほど少ないのです。
ですから、
イノベーション・マネジメントにおけるもう1つの課題は、
イノベーションを起こした企業が、
競争優位をいかにして持続させるか
その可能性について考えることだと言えるでしょう。

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