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2007年06月07日 07:40

ベンチャーの成功と生存(ベンチャー企業/五十嵐)

そろそろ、個別のベンチャーの企業の
話をしなければならないかなと思っていますが、
具体的な話に入る前に、
個々のベンチャー企業の事例を見ていくことによって、
それを自ら起業する際にどうすれば、
実務上の参考と活用できるか
という考え方にについて
今日はお話をしたいと思っています。


■起業家の「先達」から何を学べるか?
今日まで、日本でも優れた起業家、ベンチャー経営者が
たくさん排出されて来ました。


古くは
ホンダの本田宗一郎氏、
ソニーの井深大氏、盛田昭夫氏、
松下の松下幸之助氏
が挙げられます。
さらに近年では、
京セラの稲森和夫氏、
ソフトバンクの孫正義氏という
多士済々です。
海外でも、
ビルゲイツ氏やスティーブンジョブス氏等々、
数多くの立志伝中の起業家を列挙できます。


さて、ここからが本題ですが、
それでは、今列挙した経営者、
あるいはまだ挙げていない
成功した起業家の伝記や自伝を全部読破したとしたら、
その読者は、優れた経営者になれるのでしょうか。


■登山を引き合いに「ベンチャー経営」を考える
ここでは、登山を例に引いて、
一緒に考えて行きことにしましょう。
例えば、マッキンレーに登ることにします。
最初に、南の稜線を目指して
どんどんどんどん登って行きました。
ところが大きな絶壁に阻まれて、
行く手を阻まれました。
迂回は困難な状況なので、
ベースキャンプに戻ることにします。
その後、再検討した結果、
登山ルートを、東の稜線に切り替えて、
歩みを進めました。
ところが、行く手を大きなクレパスに阻まれました。
引き返すことも選択肢の一つでしたが、
結果的にクレパスに沿って進むことを決定します。
クレパスに沿って進んで行くと、
幸いなことに割れ目の狭い所を見つられました。
そこで担いでいたアルミ製のハシゴをクレパス渡し、
無事に対岸に渡ることが出来ました。
その後は大きな障害も出ずに、
登頂することに成功したとします。


実は、これが現実の話だったとします。
ところで、伝記や自伝では、どこまで逐次的な事実が
記載されているのでしょうか?
それは当人でなければわかりません。


しかも、上の例で示したように、
この挿話においてでさえ、
いくつか意志決定を行わなければならない
ポイントがあったことは
ご理解いただけると思います。
そのポイントポイントで
意志決定を重ねた結果、
マッキンレー登頂という
成果に繋がったわけですね。
ポイントポイントの
意志決定が正しかったから、
成功に繋がったと言える一方で、
果たして、どこかで別の選択をしたら、
成功しなかったのかということは不明です。
また、意思決定のタイミングで
いくつの代替案の中から、
何故、それを選んだのか、
また、どのような結果を
期待していたのかについての、
記載がないケースも多いと思います。


しかも、選んだ季節やルート、
実際の気象条件、積雪量、
それから年代によって、
技術は進みますから装備に差が出ます。
資金的な余裕があったのかなかったのか、
または登山チームの構成が
どのようなメンバーで構成されていったのか
など、いくつもの条件を
組み合わせて考える必要があります。


また、登頂実績のある頂に登るのであれば
参考にもなりますが、
ベンチャーが登ろうとする山は、未踏峰、
つまり、誰も登ったことのない頂を目指すことになります。
よって、既知の領域はあまりない方がむしろ多いでしょう。


■最強起業家に学ぶ
「経営パワー大全~最強起業家に学ぶ、戦略と実行のマネジメント」
(原題、The Guru Guide to Entrepreneurship)
という図書があります。
これは、世界のトップ経営者70人の、
250冊の書籍と2,000冊を超えるエッセイを、
サマライズして、一冊の本にまとめて
共通項を求めたものです。
ですから、成功した起業家から
学びたいとお考えの方が
いらっしゃいましたら、
この本を読めば70人の英知、
2,000冊のエッセンスを
読み取ることが出来ますので、
その方が効率的と言えると思います。


■経営学におけるベンチャー企業論
経営学を学問体系として考え、
大雑把に整理をすると、
大きな流れは「戦略論」と
「組織論」に二つに大別できます。
その大きな流れの支流を見ていくと、
「戦略論」には「全社戦略」、「事業戦略」、
「競争戦略」、「製品開発戦略」等に整理できます。
一方、「組織論」には
「マクロ組織論」、「ミクロ組織論」が上げられます。
蛇足ですが、「ミクロ」というのは、
モチベーションのように、人間個々あるいは、
人対人に注目するものであり、
「マクロ」はそれを超えて
「組織」をどう設計し、
どう動かしていくかに注目するものです。


「戦略論」「組織論」以外にも、
マーケティングや会計学、
ファイナンス、ロジスティックス等
多くの細分化された学問に体系立てられ
整理されています。
これが経営学です。
そしてそれぞれに専門化されていて、
たくさんの論文や書籍が出ています。
比較的、大組織を対象とするものが多いと思います。
その理由の一つとして、需要が高いことが挙げられます。


中小企業論という学問もあります。
これも社会科学の範疇で、
経営学に近しい学問です。
経営学の枠組みの中で、
例えば、中小企業金融や人事管理という
中小企業特有の問題を扱う一方で、
中小企業政策はいかに在るべきかの
議論も盛んに行われています。


それぞれに専門化され、
体系化されている訳ですが、
ここで、「ベンチャー企業論」を考えるときに、
経営学や中小企業論に理論を
エッセンスとして学び、活用していく必要があります。


なぜなら、創業間もないベンチャー企業では、
いくつもの製品開発が
できるあるわけではありません、
採用できる人員にも限界があります。
製品開発を行い、
人材を採用するにしても資金調達は必要です。
ですから、戦略論だけ、
あるいは、組織論だけで
考えるということはできないわけで、
ファイナンスも全てリンクさせる必要があります。


冒頭の登山の比喩に戻しますが、
前回、ベンチャーは1,000に3つしか成功しない
という話をさせていただきました。
この、1,000に3つの世界では、「絶対に成功する」という
処方箋というのはまずあり得ません。
しかも、どの様なタイミングで、
どの様なメンバーで登るかというのは、
本当に千差万別です。


起業を志すものが冷静に
自らの立ち位置を分析して、
何が使えて、何が使えないかを
アレンジする必要が絶対に出てきます。
ですから、
例えば、経営学のセオリーと
自ら起業するケースとでは、
ここまで、経営学のセオリーは使えるが、
そこから先は、修正する必要がある。
という応用が必要なのです。
同様に、成功した経営者の業績を考えるときには、
彼が置かれた時代背景や状況を想定して、
どのような選択肢があって、
何故、彼はそこから特定の一つを選んだのか
を類推することが大切です。
つまり、先人の知恵を自分の状況に咀嚼して、
自分の経営に生かしていくかということを
常に考えていくことが求められます。


これから、私が個別の企業のお話をする際には、
是非、今日の話を思い返して
それをどのように自分の経営に
役立つのかという視点を
忘れないで欲しいと思います。
しかも、何を学ぶかというのは
起業家個々で異なるものですので、
最後は自分で考えるしかないということです。


重ねて、強調しますが、
経営学や先人の経営者のいろいろな知恵など、
それから学問的な知見というのはあります。
しかし、自分が起業する場面というのは、
すべてが完全に一致するものではありません。
一部は重なり合いますが、
重なり合わない部分の方が大きい。
ですから、自分自身で状況を冷静に見極めた上で、
何が使えて何が使えないかということを
判断していくことが
1番大事なことだと思います。

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