2007年06月26日 07:40
起業機会 (ベンチャー企業/五十嵐)
■起業機会とは何か
これまで何回か「起業機会」という話をしてみました。
今回はそのことについてお話したいともいます。
「起業機会」とは、文字通り
「起業するチャンス」と考えてもよいでしょう。
むしろ、
「起業するか否かという意思決定のポイント」と言うよりは、
「見えてはいないのだけど、
厳然たる事実として存在するもの」というふうに
思っていただいた方がいいと思います。
例えば、インターネットが発達し続けていますが、
その発達に際して見える対象は、
人それぞれ違うはずです。
また、同じ対象を見ていても、
人によって違って見えるものでもあります。
このように、機会というものは、
人によっては見えたり見えなかったりするのですが、
すでに存在する物であり、これが認識できるかできないかが
全ての出発点です。
このような起業機会に加えて、
独自のアイディアを加味して、タイミングを計って、
進めていくという事になるわけです。
学生達や、ビジネスプラン・コンテストでの発表者からは
「アイディアを持っているんです」と良くアピールされます。
しかし、大切なことではありますが、
アイディアと起業機会は同じではありません。
先程お話ししたように、
起業機会というのは、
アントレプレナーシップの原点なのです。
私たちには見えていないけれど、
起業機会は既に存在していて、
それをいかに発見し、
そこに、いかにアイディアを付与する事によって、
ビジネスに持っていくか、
ということが起業のプロセスであるということは
すでに述べました。
■起業機会はどこにでもある
起業機会というのは
それこそどこにでもあります。
例えば、10年か15年くらい前に、
団塊の世代が大量退職したことを狙って
ビジネスを開拓していこうと思っていた人は、
もうその時点でそれが見えていたという事です。
人口動態が変わっていくということは、
団塊の世代が生まれて、
何年かして人口が減っていたという段階で、
この人たちが、
まずは小学校に入ったらどうなるか、
また、大人になったらどうなるかという事が
既にそこで決まっていたわけです。
すなわち、すでにそこには起業機会が存在していたわけです。
しかし、実際に人口動態が変わった段階で
誰かが気付くはずですし、
見えているはずなのですが、
それに対して、
どういうアイディアで、
ビジネスを興すかを考えなければいけません。
また、どのタイミングでやるのかが、
重要なのです。
だから、団塊の世代が子供の時であれば、
幼稚園を興せばいいですし、
彼らが老齢に差し掛かれば、福祉や介護が必要になります。
今セカンドライフが注目を集めていますが、
今から10年以上前から、このような状況になることは
想定できたはずですから、
人に先んじて、備えることは実際に可能だったわけです。
もう一つ大事なことがあります。
起業機会を発見したとしても、
最終的には、その起業機会を、
付加価値の高い物やサービスにしていかなければ、
ビジネスにはつながりません。
先ほどお話した「人口動態の変化」を例として話を続けると
「人口の動態変化」それ自体は、それは表象にすぎません。
これをいかにビジネスへと翻訳していくか
と言うことが大事になってきます。
ですから、そこに、
先程言ったアイディアを
どのように組み合わせるか
起業家の能力が問われるわけです。
■起業機会の発見の手がかり
その起業機会の発見の手がかりというのは
どんなところにあるのでしょうか。
すでにお話したことではありますが、
復習を兼ねて、おさらいしましょう。
「イノベーション」の定義も、
起業機会発見の一つの手がかりと言えます。
シュンペーターにとれば、
・新製品の産出、
・新生産手段の導入、
・新市場の開拓、
・原材料、半製品の新しい獲得、
・新しい経営組織
この5つでした。
新しい物を作ったり、
新しいサービスを作るだけではなく、
こういった五つの手段があるのだということは、
まず頭に入れておく必要があると思います。
技術だけに限らず
経営のやり方だとか、
あらゆる分野で革新はありえるのです。
だから、もっと広い意味で
「機会」を捉えた方が良いと思います。
それから、イノベーションの機会を捉える7つのヒント
についても、すでにお話しました。
7つというのは、
・ 一つめが、予期せぬ成功と失敗ですね、
・ 二つめが、ギャップの探索、
・ 三つ目が、ニーズの発見、
・ 四つ目が、産業構造の変化の認識、
・ 五つ目が、先程から話題にのっている、人口構造の変化、
・ 六つ目が、認識の変化、
例えば、ライフスタイルなんかは随分変わってきたと思います。
・ 七つ目が、イノベーションといいますが、
新しい技術や発見をいかに活用していくかということになってきます。
こうした起業機会というのは、
冒頭からお話ししたように、
いろんな人には、見えているように見えて、
実は世の中っていうのは、
色々な、例えば市場間の、情報のギャップだとか、
需給関係の不均衡だとか、
皆さんが平等にあるように見えても、
色々なところでギャップというか、
わずかなその差みたいなのがあります。
その差が、優秀な起業家には見えて、
そうでない人には見えないという事が
問題になってきます。
ですから、そういった物が
どうしたら見えるようになるかということが、
やはり起業のスタート地点だと思います。
■インテルの起業当時
それでは、具体的な起業の例を挙げてみましょう。
例えば、「インテル」は
今でこそ世界最大の半導体メーカーですが、
インテルの創業当時を考えると、
まだ半導体を作るのに、
バケツか何かで
手でグリグリグリってやって作っていました。
これは事実でして、
当時の技術はその段階だったわけです。
そういったところから
インテルの歴史はスタートしています。
ところが今、インテルの半導体を作るためには、
ステッパー(stepper)という
大きな露光器のお化けがあって、
1台30億円します。
だから4台買ったらそれだけで
120億円ということになります。
その当時は、
それをバケツで作ることが出来たから、
インテルを創業できたのであって、
今からインテルと同じような
半導体の会社を作ることが出来るかというと、
そんなことは出来ないのです。
しかし、半導体の製造に特化した「ファンダリー」という企業群が
台湾ではいくつも誕生し成長を果たしました。
だから、これを逆手にとって半導体の設計に特化したベンチャーも
誕生するわけです。
福岡はこのシステムLSIの設計に特化したベンチャー育成を
地域として目指していうわけです。
■アイディアは起業機会を補完するもの
こういった話を聞いていると、
本当に自分でも何か起業が出来るじゃないかとか、
自分もきっと成功できると、
つまり、起業とは本当に簡単なものに思えてきます。
ですから、起業家はアイディアを持っていれば成功できると、
思い込んでしまう側面があります。
しかしながら、そうではありません。
今みたいに変動する世の中においては、
アイディアが技術となんらかの関係があれば、
成功する可能性は高いかも知れませんが、
アイディアそれ自体は、
無価値なわけです。
発明とイノベーションは違うとすでにお話して来ていますが、
技術があっても、それをいかに価値に変えるかがより困難であり。
重要なことでうす。
それでは、どうして、
「アイディア絶対主義」という妄信を持ってしまうか、
3つの理由があります。
1つ目は、例えばゼロックスのように、
成功した起業家で、
お金持ちになった人が非常に多いことがあげられます。
成功者は実は一握りで、圧倒的に失敗者の数が多いにもかかわらず、
失敗者は表に出てこないせいもあって、
アイディアを出したら、
自分もお金持ちにきっとなれるはずだと、
思いこんでしまう傾向にあるようです。
2つ目は、開発者にありがちなのですが、
発明だとか、新製品の開発、または発見については、
その人の「思い」が色濃く反映されます。
「これは俺が開発した」みたいな感じです。
このように、強烈な所有者意識があるために、
必要以上にアイディアを重視してしまうのです。
3つ目は、新しいアイディアを生み出すことが、
楽しいことであるということに起因しているようです。
そういった物を開発したり、発見したり、
新しい商品を作る人は、その活動が非常に楽しいんです。
そういう欲求があるために、
アイディアがいいのだ、
重要なのだと言ってしまう傾向があるようです。
重ねて強調しますが、
アイディアは大切ですけど、
一番大事な事は起業機会です。
その起業機会をどうやって
アイディアによって補完して、
価値に変えていくかと言うことが
最初のスタート地点であり、
重要なことを何度も自分に言い聞かせる必要があります。
アイディアがあってもニーズがなければ
意味がないのですから。