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2007年09月18日 08:00

ベンチャーの戦略論:知的財産権 (ベンチャー企業/五十嵐)

前回、ベンチャー企業が
いかにして先行者としての
利益(先行者利得)を守るか、
についてお話しました。
今回は、特に技術的な誘因を
確保するために必要なカードとしての
知的財産権がありますので、
今回は知的財産について要点をお話します。


■何のために特許をとるのか
日本のベンチャーの会社では、
特許証を額縁に入れて
応接室に飾っている会社をよく見かけます。
本当に多いのですよ。
しかし、特許は飾りにする物ではなく、
「特許によりこれから進出するマーケットを
押さえられるかどうか」が大事なのです。
特許を取れるかどうかは問題ではありません。
特許は飾っておくものではなく、活用するものです。

知的財産権というとき、
特許以外にもいろいろあります。
例えば、形やデザイン。
九州であれば「ひよこ」というお菓子の形が
意匠権として対象になるかどうかが
裁判で取り上げられ話題になりました。
このような「意匠」も権利の一つです。
その他、半導体の回路のレイアウトや、植物の品種。
営業秘密というもあります。
ソフトウェアに関して言えば、
特許で対応が可能ですし、著作権で守ることもできます。
その他にも、営業的な標識、商標権や商号というものもあります。


■知的財産権の特徴
知的財産権が、
不動産の所有権と違うのは
人為的な財産権であるということです。
どういうことかというと、
特許は「発明の開示」と「発明の独占」
という2つの概念のバランスの上で
人為的に成り立っていることになります。
その理由は、「一家秘伝」にして
その発明を内緒に抱え込んでしまった場合、
その発明が開示されていれば次の開発は楽だったのに、
開示されないばかりに次の開発が
遠回りになってしまうことが起こります。
一層、産業や技術の進歩を促すために開示が必要です。


しかし、単純に開示してしまえばよいかというと、
開示すると誰にでも使われてしまい、
発明に対するインセンティブが無くなってしまいます。
そこで、開示の変わりに一定期間、
その権利の独占を許そうということになります。
時代によって、独占の方を強くしたり、
開示の方を強くしたりなど、知的財産権とは動きます。
また、国によっては例えば、
先進国は独占を、発展途上国は開示を強調する
ということも起こりえるのです。


■日本における特許の要件
日本での特許の要件には8つあります。
1 発明であること(発見ではダメです)
2 産業上の利用性があること
3 新規性があること
4 進歩性があること
5 選外に記載されていないこと(1番最初に登録されたということ)
6 特許の禁止対象となっていないこと(生命に関するものや兵器は特許として許可されません)
7 最新の出願であること
 8 申請書類、明細書に不備がないこと


大事なことをいくつか言うとすれば、
まずは3番目の「新規性」です。
新規性があるとは、簡単に言うと公知効用、
文献公知、インターネットで
公知されていないということです。
だから誰もが知っているものではなく、
自分で開発したと言うことが証明できること。


例えば、公知(人に知られている)のものは、新規性がありません。
べらべらと皆に言って回たり、
ラジオなどでこういう開発をしましたと言ってしまうと、
それは公知になったと介されますので、
新規性が消失してしまいます。
公用とは、ものにして作ったり配ってしまうことです。
ですから、特許申請前に製品にして
販売してしまったりすると「公用」となりますから、
新規性がないということになります。


次に、4番目の「進歩性」。
進歩性とは、従来の技術と比べて
いかに進んでいるかということです。
良く例に出されるのは、消しゴム付の鉛筆です。
これは進歩性があるのかといえば、
進歩性はないと考えられます。
というのはこちらに鉛筆があって
こちらに消しゴムがある。ただくっつけただけなので
それぞれに対して新しくなっている訳ではありません。
進歩性では、技術がどの程度進んでいるかということが見られます。


■特許を守るための3つのフレーム
また、開発をして特許を出すときを
請求項というフレームで見ると、
出し方が下手な人がいます。
特許を出すときには少なくとも
3つのカテゴリーが重要と言われています。


まずは「ものの発明」です。
例えば、今手元にペットボトルがありますが、
ペットボトルの中を洗う洗剤といったものの発明があります。
次に「方法の説明」。
ペットボトルにそういう洗浄剤を入れて
こういう形で洗うという洗い方、方法の発明もあります。
それから、洗浄液の作り方といった「製造方法の特許」です。
それぞれ押さえ方が違ってきますから、
この3つを押さえることが必要です。
例えば方法の発明だけで特許を出すと、
出来たものが同じであっても
守れないというケースもあります。
そうならないためにも、特許は
この3つのフレームで守る事が大事です。


■特許として守ることが難しい例
特許として守りにくいものもあります。
例えば、特許の申請には3種類あって、
「もの」、「方法」、「製造方法」の3つが
基本的な申請対象となります。
例えば、「製造方法」だけで申請し「もの」で申請していなかった場合。
「もの」自体は公知・公用でガードできません。
「製造方法」だとすると、摘発するのは難しい場合もあります。


例えば、工場の中で製造が行われている場合、
製品から製造方法を特定するのが難しい場合はよくあります。
その方法が特許で守られていたとしても、
実際に工場の中でどういう形で商品を作っているか
という方法は目に見えません。
このように摘発が難しい場合は、
特許としてはふさわしくないかもしれません。


加えて、個人個人が真似できるようなものも
特許としては成り立たないと思います。
会社であれば訴えることが出来ますが、
あるアイデアが特許として成立したとしても、
1人1人が真似てしまうと、
国民全員を特許紛争で訴えることは出来ません。


特許は、取ることが大事なのではありません。
前回お話しした先行者利得。
何が先行者利得でそれをどう守っていくか
という発想が大事です。だから、
特許は守るための手段であって、
そのカードをどうやって切るかということまで
考えておかないと、
本当の意味で使える特許とは言えません。

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