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2007年11月05日 07:40

技術予測の方法(イノベーション/永田)

今回から2回に亘って、
イノベーション・プロセスの複雑性を
どのように捉えたらよいのか
についてお話しします。
今回は技術予測の方法について話し、
次回は技術の実用化や
イノベーションの普及過程を
予測することが困難な理由を、
具体例をあげて説明します。


技術戦略を立案する際には、
市場に対する中長期朝的な見通しに基づく
事業戦略との整合性を考慮するとともに、
技術進歩に対する中長期的な
見通しが必要になります。
しかし、技術進歩の方向を
見定めることは難しいのです。


■傾向外挿法
技術進歩の傾向が安定している
分野については、
過去の傾向を将来に延長して
予測することが可能です。
これを傾向外挿法といいます。
例えば、半導体の性能と集積は、
18ヶ月ごとに2倍になるとする
「ムーアの法則」と呼ばれる傾向がります。
実際、半導体のDRAMの分野では、
ほぼ3年ごとに4倍の容量を持った
新製品が市場に投入されてきました。
このような場合には、
次の世代の製品が、
どのようなタイミングで市場化されるのかは、
高い確率で予測できます。
しかし、全く新しい技術や、
現在広く使用されている技術に
置き換わる技術が、いつ実現するのか、
また、いつ製品や製法として実用化されるのか、
どのような速度で普及していくのかを
予測することは困難です。
そのような予測を行うためには、
技術や市場の潜在的なニーズに関する
かなり専門的な知識が要求されます。


■デルファイ法
そこで様々な技術予測の方法が
考案されてきましたが、
その代表的な方法の一つが
デルファイ(Delphi)法と呼ばれるものです。
デルファイとは、
ギリシャの神殿があったとされる
聖地デルフォイから来た名称です。
専門家の意見に依拠する方法であることから、
このような名称が与えられています。
米国のシンクタンクである
RAND コーポレーションが開発しました。
ただ、専門家の意見を聞くといっても、
会議方式で行うと「権威」の意見に
引きずられる可能性があります。
これを避けるため、
質問票調査法が用いられます。


この方法では、ある技術課題の
実現予測時期などについて、
多数の専門家を対象に質問票で意見を聞き、
その集計結果を回答者にフィードバックして、
必要と思われれば自分の回答を修正してもらいます。
こうした調査の繰り返しによって、
専門家の意見を収斂させるのです。


日本では、1971 年以来、
政府により、5年間隔で過去8回、
デルファイ法による大規模な
技術予測調査が実施されています。
2001年に発表された第7回調査では、
16分野、1065課題につき
約4400名の専門家を対象とした
調査が実施されました。
その調査結果では、
例えば今年2007年には、
世界中どこからでも通話可能な
携帯端末が普及すると
予測されていました。


技術予測調査の結果は、
科学技術政策研究のHPで
公開されているので、
企業の技術経営に関わっている方々は、
技術進歩の長期展望を得る上で
参照されると良いと思います。


専門家は、自分の専門分野である技術課題に
コミットメントを持って回答するので、
こうした技術予測の結果は、
案外高い確率で的中しています。
しかし、もちろん100%的中するわけではなく、
その不確定要因は
イノベーション・プロセスの複雑性にあります。


専門家は技術的な可能性を中心に
将来を予測する傾向がありますが、
ある技術が実用化されたり、
普及したりすることには、
他に重要な要因が関わっています。
それは、そもそも、その技術が
市場において求められるものであるか
どうかということです。
いかに優れた機能、
性能を実現する技術が発明されたとしても、
それに対する市場ニーズがなければ
実用化されることはありません。
また実用化されても
普及するかどうかは、おぼつきません。


■イノベーションの源泉
イノベーションに関する第2回の話の中で、
イノベーション・プロセスの出発点は
技術的な発明が行われる研究であるとは限らず、
生産、マーケティングなどの
様々な業務プロセスからの
情報のフィードバックが起点になることも
あるという点を取り上げました。
取り分け市場の潜在的なニーズは、
重要な起点になります。


イノベーションの主な源泉が、
新技術なのか、市場ニーズなのか
という点については、
古くから多くの実証研究が行われています。
それらをおおまかにみると、
新技術を起点とする
イノベーションは3割くらいで、
7割は市場ニーズを起点としています。


したがって、
イノベーションを予測するためには、
技術的な発明の可能性ばかりでなく、
技術のユーザーの観点に立って、
何が求められているのかを
考慮する必要があります。


しかし、新技術が発明され、
それによって提供される機能、
性能に対する潜在的ニーズが存在しても、
なおイノベーションの普及は
妨げられる場合があります。


■イノベーションの予測を困難にしているもう1つの要因
イノベーションの予測を困難にしている
もう1つの要因は、
思いがけない発明が
行われることもあるという点に
起因しています。
企業の行う研究開発は、
ほとんど何らかの目的に向けて
行われていますが、
その過程で思いがけない技術が
生み出されることがあります。
このようなことをセレンディピティといいます。
これは偶然にいろいろなものを
発見する能力を持った
3人の王子のおとぎ話
「セレンディップの三人の王子」
から作られた言葉です。


■次回、このようなイノベーションの予測を
困難にしている要因について、
具体例をあげ、
技術経営の課題について議論します。

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