BBIQモーニングビジネススクール > 中国のベンチャー事情 その4(ベンチャー企業/五十嵐)

2007年12月17日 08:00

中国のベンチャー事情 その4(ベンチャー企業/五十嵐)

今日は、中国の大学発ベンチャーの
お話をしようと思います。


■中国の大学発ベンチャー
日本では、2000年から
大学発ベンチャーを
積極的に推進することが
国の政策になり、
現在までに、約1,600社の
大学発ベンチャーが設立されました。
しかし、苦労して設立された
大学発ベンチャーがうまく機能しない
という問題が生じています。
その問題に対して、
中国の事例が
何かヒントになるのではないかと考え、
今回は天津大学から出た
大学発ベンチャーを
取り上げたいと思います。


■利安立化工有限公司の設立
今回紹介するのは、
利安立化工有限公司
(天大天津グループの生産会社)です。
現在、従業員300名の会社です。

1989年に、天津大学の教員であった、
現在のグループ代表が
休眠状態の印刷会社を
買収して創業したのがスタートです。
当時、大学の教員の給与は安く、
政府の予算削減により
大幅に研究費が減少しました。
それを解決手段の一つとして、
中国でも積極的に大学を退職し、
有能な研究者から起業を促し、
事業からの収益を大学の研究費に還元しよう
という流れが活発化していました。
背景は少し違いますが、
日本の状況と似ていますね。
ところが、やはり日本と似ていますが、
やっぱり、研究の才能と
経営の才能は方向性が異なります。
優秀な研究者であっても、経営は初心者。
会社は上手く行きませんでした。

孫春光(現在46歳)は、
天津大学在籍時には、様々な活動を組織し
いろいろの団体のリーダーを務める
大学の中でも一際目立つ存在でした。
卒業後3年間勤務した後に大学にもどり、
5年間天津大学で教鞭を取っていました。
そこに、恩師が起業した
ベンチャーの危機を知ります。
恩師の窮状を救うべく、
1994年に大学を辞し
会社へ参画しました。

しかし、残念なことに彼自身は、
政治的なことは非常に得意なのですが、
直面する経営実務については、
向いていないことが
わかりました。

そこで彼が、どうしたかというと、
経営ができる人材、
工場の管理が出来る人材、
開発ができる人材 等々
昔の同級生でこれはと思う友人や
友人の伝手を使い
どんどんスカウトすることになりました。
その結果、彼を含めて、
8人の天津大学の教員が賛同し、
天津大学発ベンチャーに転職しました。
王岩松(現在38歳)は、
95年に教員を退職し、
総経理に就任しまいた。
彼の経営センスは一流です。
8名は、資本金として
それぞれ2万元を出し合いました。

1996年に、酸化防止剤を作成する
小さな工場を設立。
1997年に、欧州から大学へ生産依頼あり、
現在の研究開発会社と分けて、
新しく製造会社を立ち上げることにしました。
これが、現在の理安立化工有限公司であり、
香港の財閥からの資本の投下を受け入れ、
合併企業としました。
そして、日清製粉系製薬会社へ
心臓病の薬の基礎化合物の
納品を開始しました。
2003年には、天津化学工業区に
10万㎡の土地を購入し
移転・本格的な事業を開始。
2004年11月に、酸化防止剤と
PET用添加剤の生産のための
新生産ラインをスタート。
現在の日本での取引先は
三菱化学や大手商社となっております。
これが会社の沿革ですが、
8人が参画後、急速に会社が成長軌道に乗ったことは
ご理解いただけますね?


■大学との関係
この会社は、現職の天津大学の教員に
助言をもらうようにしています。
こうして、最先端の科学技術を常に吸収することが、
大学発であることの優位性となり、
信頼を醸成するのに有利に働いています。
一方で、収益の分配を考えるときには、
そして、毎年必ず大学に寄付をすることを考えます。


■エグゼクティブは9人
1人は女性で設計を担当、
そのまま中枢メンバーになりました。
8人は天津大学化学部出身者であり、
グループ会社や本社の要所に籍を置き、
結束しています。
予断ですが、この8人の奥様は職業を持ち
共稼ぎでサポートしています。
中国だから当たり前かも知れませんね。
ところが、奥様のうちの4人が天津大学の教員で
あと一人は別の大学の教員です。
天津大教員が4人で、別大学教員が1名で、
内助の功ではないですが、
奥様は安定した「大学」で生活の基盤を守り、
旦那様は、リスクはあるけど
ベンチャーでの成功に掛ける。
以前にお話したシリコンバレーの
やり方に通じるものがありますね。


■日本の大学発ベンチャーへの示唆
ほかの学部でも同じように大学発ベンチャーを
起業したものも多かったようです。
しかし、空中分解したものが多かったそうです。

ですから、冒頭でお話ししたように、
日本でも、中国でも状況は全く一緒で、
経営の才能がない人が、
なれない経営実務をやってしまうと、
会社がうまく回らないのは当然です。
ただ、そのまま放っておいたり、
潰したりしてしまうと、
せっかくの技術や人材が死んでしまいます。
だから、外部から志を同じくする誰かが、
しかも1人ではなくてチームで参加することで、
大きな成長に向けて転換できるとだと思います。
それでは、日本の大学発ベンチャーに中で、
彼らのような8人が勇んで飛び込む会社は
何社位あるのでしょうね?

中国のベンチャー事情 その4MP3ダウンロード

前の記事へ 次の記事へ


ブログ&ポッドキャスト検索

ページの先頭へ戻る