2008年01月01日 08:00
企業の戦略マネジメントとバランススコアカード(その1) (産学連携マネジメント/高田)
経営において
戦略をマネジメントするツールとして、
バランススコアカードという手法があります。
今日はこの話を紹介します。
■バランススコアカードとは
バランススコアカード(以下、BSC)は、
90年代に米国ハーバード大学
ビジネススクールのキャプラン教授らにより
民間企業の経営管理手法として
開発されたもので、重要な戦略事項の抽出と
組織内での共有、さらには
戦略の遂行管理を行うためのツールです。
最近では、世界中の民間企業や
非営利団体にも普及しています。
組織は、
戦略をつくり目標を設定しますが、
なかなか実行できなかったり、
組織の内部で周知や共有が進まない、
といった問題はよく見られます。
実際に現場で個々の業務に
携わる人達にとっては、
「木を見て森をみず」の状態にもなりがちです。
しかし、BSCを使うことによって
組織全体の方向性や重要な成功要因を
俯瞰して見ることができるようになり、
その結果、組織の構成員の意識を
束ねることが可能となります。
民間企業の経営だと、
財務が重要視されますが、
BSCは、財務だけでなく、顧客の視点、
内部の業務プロセスの視点、
そして人材を育てる視点、
の4つの視点からバランス良く
企業経営の全体を見るという特徴を有しています。
つまり、「財務・顧客・プロセス・人材」の
4つの視点から、具体的な戦略を整理し、
数量指標を設定することで
その着実な達成を図っていく点が特色です。
「収益」を上げ、従業員に
給与を支払い株主に利益を還元するためには、
「顧客」の満足を高める必要があります。
そのためには、組織内部の
「業務プロセス」をより良いものにする必要があり、
その基盤として、内部の「人材」が
学習し成長することが必要である、
という因果関係を「戦略マップ」という1枚のマップで
分り易く表現します。
現在では、BSCは民間企業に留まらず、
病院や自治体など公的機関においても
活用されるようになりました。
■サウスウエスト航空の例
サウスウエスト航空は、
アメリカで成功した格安航空会社として有名ですが、
ここの経営にもBSCが取り入れられています。
この会社が作った戦略マップを見ると、
「財務・顧客・プロセス・人材」の
4つの視点で整理されています。
まず「人材」の視点では、
重要成功要因として、
「地上クルーのチームワーク向上」を掲げています。
このチームワークが向上すれば、
「プロセス」の視点に掲げられた
「機体の実稼働時間アップ」という項目が達成されます。
その達成により、次に、
「顧客」の視点のところに掲げられた
「定時離着陸」と「低価格」という項目が達成されます。
飛行機が定時に離発着することによって、
顧客の信頼を獲得できるし、
機体の実稼働時間があがれば、
低価格で飛行機を飛ばすこともできます。
これらが達成されると、
最後に「財務」の視点のところで
「低コスト」と「売上拡大」が実現し、
最終的に「利益の向上」が実現します。
それによって同社の株価はアップするので、
従業員が保有するストックオプションの価値が上がる、
つまり、「人材」の視点のところにぐるりと戻ってきて、
従業員のモチベーションが上がり、
更に「実稼働時間アップ」を目指す、という構造です。
働く人間(人材)が向上すれば、
仕事のやり方(プロセス)が良くなり、
それによって顧客が満足度を高め、
その結果収益も上がる。
収益が上がった恩恵は
従業員も波及し、更に能力向上を目指す。
このように4つの視点で
抽出された重要成功要因を結びつけ、
ストーリー性を持たせることがBSCの特徴なのです。
このように、BSCでは、
重要な成功要因の抽出を行いますが、
この際に、従業員と管理職とがディスカッションし、
情報や認識を共有しながら
この作業を行なうことも特徴です。
また、実際の管理面では、
自分達の活動が正しいのかを判断するために、
KPI(Key Performance Indicator)という指標を設定します。
KPIの上下によって、健全な経営がなされているか
モニタリングができるのです。
■BSCアジア太平洋サミット2007
現在ではBSCの世界でサミットが
行われるようになりました。
2007年10月には、
アジア太平洋地区のBSCサミットが
初めて東京で開催され、企業や公的機関など
BSCを導入している団体(約150機関)の
代表約300名が参加しました。
具体的には、三菱東京UFJ銀行や
ドイツの製薬企業、更には韓国政府や
ボツワナ政府、といった公的団体も参加し、
プレゼンテーションを行なって
BSCへの取り組みを披露しました。
このサミットでは、
九州大学の取り組み(QUEST-MAP)も
日本の大学が初めてBSCを活用した
組織マネジメントに本格的に
取り組んでいる事例として、
20分の報告機会を与えらました。
各事例報告から、
BSC導入の成功要因を整理してみると、
次の3点が抽出されます。
(1)トップの正しい理解とリーダーシップ
例えば三菱東京UFJ銀行は、
現在の頭取がアメリカ勤務時代に
BSC導入経験を持っていたことから、
トップのリーダーシップの元に、
日本でも本格導入を果たしています。
またシャープは、社長自らが
ハーバードのキャプラン教授に教えを請い、
正しい理解の元で社内導入を図った
という経緯があります。
(2)継続と忍耐強いコミュニケーション
BSCを導入しようとすると、
通常の業務に加えて余計な仕事が
増えてしまうため、社員には
最初は不評なことが多いようです。
しかし、トップのリーダーシップに基づいて、
担当者が組織の内部で忍耐強く
その重要性を説き、忍耐強く
継続してBSCへの取り組みの活動を
広めることが重要となります。
(3)社員全体が“お祭り的な”楽しさで情報や価値観を共有する
BSCを作成する過程では、
部署毎にワークショップなどを開催し、
わいわいがやがやとした
楽しい雰囲気の中で組織の将来像を語り、
一方で乗り越えるべき課題を共有しながら
戦略的に重要な項目を抽出していきます。
このプロセスを楽しめる仕掛けを行ない、
参加者に能動的な参加意識を
持たせることも重要となります。
次回は、九州大学が
進めているQUEST-MAPについてご紹介します。