2008年03月07日 08:00
日本の会計基準の国際性(財務戦略/村藤)
■国際会計基準の成立の背景
今回は、日本の会計基準の国際性について
お話したいと思います。
国際会計基準というものがありますが、
これはどちらかというとヨーロッパ勢が中心になって、
会計基準をグローバルに統一しよう
という発想で出来てきたものです。
その背景には、実際の企業活動もグローバルになっており、
それぞれの国で別々の会計基準を使っていると、
その企業が何をしているのか全然分からない
という状況になってきたということがあります。
多国籍企業のグローバル化につれて
会計基準も国際的にしよう
という話が出てきているわけです。
■国際会計基準の受け入れの経緯
この取り決めはヨーロッパ勢が中心でしたから、
最初は、アメリカの会計基準が、
俺たちは一緒になりたくないと言ったり、
日本も、うちもちょっと独自の事情がありますから
ということを言ったりして、
色々な国々が自分の会計基準を守ろうとしていました。
ところが、アメリカが最初に、
もう一緒にしましょうと歩み寄って、
さらに世界100ヶ国以上で
国際会計基準を使ってやりましょう
ということになりました。
それに、中国もインドも韓国も、
すみません、国際会計基準でやります
という話になりましたから、
日本も去年の8月にギブアップして、
すみませんでした、これから3年後くらいで
国際会計基準に合わせます、
ということをついに宣言してしまいました。
そういうことで、日本独自の基準だといっていたものが、
これから続々と国際会計基準に変わっていく
という話になったわけです。
■国際会計基準への移行で何が変わるのか?
そうすると、今まで日本の基準で記載していた項目なども、
どんどん金額が変わってくるということになります。
また、それだけではなく、儲かっているのか、
儲かっていないのかということ自体が、
これから全然変わってくるかもしれません。
これまでと180度変わる可能性がある
という恐い状況になってきたのです。
ですから、そもそも一体どういうことになるのかということを、
企業としてある程度把握していないと、
危なくてしようがないという状況です。
■M&Aにおける時価取引への移行
例えばM&Aを行う時はどうなるのでしょうか。
日本では、M&Aを行う時に、
今までの帳簿価格をそのままにして、
M&Aをやったからといって
特に値段が時価に変わることはないという
帳簿価格取引を結構たくさん認めてきました。
これはプーリング法といって、
両方の持ち分をプールして、
簿価のままでやっていくという方法なのですが、
国際会計基準やアメリカ方式では、
第三者間取引は時価でやるという
パーチェス法を採用しています。
そこで、日本でもプーリング法を廃止して
今年中にパーチェス法に一本化しよう
という動きが出てきています。
時価取引をした場合には、
買収対象の企業を帳簿価格よりも高く買うと、
暖簾代、英語でいうとグッドウィルというものを
計上することになります。
これを日本だと20年位かけて償却するという、
購入後の償却負担が出てきて、
損益計算書の費用を計上しなくてはいけませんので、
後でどうなるか考えなくてはいけない
ということがありました。
ところが、国際会計基準やアメリカ方式だと
帳簿上の価値は下がりませんので、
別に費用を計上しなくても
いいではないかということで、
買収した企業の価値が下がらなければ、
毎年一定額の費用計上は必要ありません。
ただ、企業の価値が大幅に下がって
回復の見込みがないということになると、
減損処理といってドボンと下げる
というようなことが起こるようになってきたのです。
それで例えばボーダフォンなどは、
2007年度3月期、去年ですが、
116億ポンドの減損処理をした結果、
53億ポンドつまり1兆2千億円くらいの
赤字に陥りました。
このように、今までみたいに
ちょこちょこと暖簾代の償却を
しなくていいようになる一方で、
買収した企業の業績が悪化すると、
一気にドボンと下がることもあるということで、
投資家としては知らないでいると、
突然でっかい損失がやってくるという恐怖が
これから起きるかもしれないという状況です。
■海外子会社・関連会社における会計基準の統一
M&A会計はまだ今年導入するところですから、
そうした影響が起こり始めるのはまだ先のことです。
しかしながら、日本では
今年起こりはじめたものがいくつかあります。
例えば、海外子会社・関連会社における会計基準の統一
というようなものが結構大騒ぎになっています。
海外に子会社をたくさん持っている会社は、
それらを連結した連結決算を
発表しなくてはいけないのですが、
これまでのように現地の会計基準でやって
日本の親会社の会計基準と違うということが、
今年の4月からはもう許されなくなります。
日本基準で全部統一するか、
あるいは、時間の問題で日本基準が
国際会計基準に移行していくのであれば、
はじめから国際会計基準に
全部あわせるという形で統一することが
今年の4月から求められるようになるのです。
そこで、これをどうやってやるかということを
トーマツが作った対応マニュアルが
300ページ位あって、
みんなこんな大変なことが
出来る訳ないじゃないかと言って
大騒ぎしているというわけです。
■当期利益の廃止と包括利益の導入
それから、もっと大変なのが
包括利益という概念です。
今までの損益計算書というのは、
売上から営業利益があり、
次に経常利益があって、
一番最後に当期利益が出てきます。
その当期利益をやめてしまおうか
という話になっているのです。
当期利益をやめてどうするのかといいますと、
包括利益というものに変えようか
ということになっています。
包括利益が今までの当期利益と比べて
何が違うのかといいますと、
資産とか負債の時価が変わった場合に、
それを包括利益の中に入れようということです。
例えば、不動産や投融資といったものが、
日本では取得原価主義といって、
買った時の値段で記載しておくことになっていますので、
損益計算書に出てくるのは、
今年の営業の結果であるとか、
金利の受け取りや支払いなど、
そういうものが中心だったわけです。
ところが、持っているものの
値段が変わってしまったとか、
借りているものや融資負債の時価が
マーケットや金利の変動で変わってきた
というようなことが、
実質は自己資本に影響を及ぼしますので、
本当はこれを勘定する方が正しいということで、
そういった勘定をちゃんとしましょう
という話になってきています。
今までと全く違ったやり方ですから、
これは大変なことなのです。
本業では儲かっているのに、
資産と負債の時価が変動するので
大きな損失が出てしまうというようなことが
起きる可能性があります。
■国際会計基準にいかに対応すべきか
こうした国際会計基準に
合わせていかなくてはいけないとなると、
どうすればいいのでしょうか。
これは結局、日本独自の基準をあきらめて
国際会計基準に合わせるということです。
アメリカが2002年に、ノーウォーク合意といって、
アメリカ独自のものをギブアップして
国際会計基準に歩み寄るということを言った段階で、
既にこれは見えていたことです。
ヨーロッパとアメリカで一緒になって
100ヵ国が国際会計基準を採用するのに、
日本だけが別のものを主張するというのは
もう許されない時代になったということです。
日本企業としては、こうした変化が訪れるのは
時間の問題であるということで
対応していかなくてはいけないということです。