2008年03月14日 08:00
自治体資産の処分(財務戦略/村藤)
今回は自治体の資産の処分についてお話します。
この番組ではこれまでにも、
自治体の資産のうち、
処分できるものは処分していくべきだ
ということをお話してきました。
この背景からまず復習しましょう。
■自治体の会計について
これまで自治体の会計というのは、
現金主義・単式簿記の小遣い帳方式を採用しており、
年度の始めに取った予算を
一年間で使い切るということで、
発生主義やこれに基づく貸借対照表を
作ってきませんでした。
ただ、資産台帳というものが
あるにはあるのですが、
これにはボート3隻だとか
道路50キロなどという資産の項目が
記載されてはいますが、
その値段については
書かれていないことも多いのです。
飛行機10機と書いてあっても、
それがいくらなのかは分かりません。
資産台帳ですから
どのような資産なのかは記載されているのですが、
それがいくらするのかということは
必ずしも分からないというわけです。
このように、そもそもいくら持っているのか
ということ自体を知らない状況で、
物によっては売らなくてはいけないと
自治体が思い始めたということですから、
これは自治体にとってはコペルニクス的な転換なのです。
■自治体が資産を持つに至った経緯
予算をとって使うというのが
今までの自治体の財務ですから、
いくらもっているのかということは
調べなければ分からないという状況でした。
そもそも、そのようないろいろな資産を、
どうして持つに至ったかといいますと、
バブルの崩壊がきっかけです。
特に土地バブルが崩壊した時に、
民間企業も金融機関関係も、
誰か土地を買ってくれないかと困っていたのですが、
やさしい地方自治体さんが手を挙げて
私が買いましょうかと言ったわけです。
土地公社というものを全国に作って、
一生懸命いろいろな人たちから
土地を買い取りました。
全国には自治体が設立した
土地開発公社というものが、
大体1,100くらいあると言われているのですが、
2005年末で金額ベースにして
5兆円くらい土地を持っているようです。
本来は、買った後に開発するなど
何らかの目的があって、
買って開発して売却するなど
というようなことをするはずなのですが、
お金がなくなって開発予定が狂ってしまい、
とりあえず持っているだけにするか、
という形で持っているものが半分位あるようです。
■資産の処分方法
じゃあ、これをどうしてやろうかということですが、
民間に売却する場合は、高く買って安く売ると
損失が発覚してまずいことになります。
ですから、自治体の考えがちな一つの方法は、
土地開発公社から自治体が買い上げることです。
買い上げる価格として、
土地開発公社が買った価格に支払金利分を足せば、
損が発覚しないことになります。
しかしながら、これは、
とりあえず損失を飛ばして
発覚を先送りしているという状況で、
トラブルが土地開発公社から
自治体に移っているだけの話です。
もう一つ気を付けなくてはいけないことは、
最近公園が増えていないか、
あるいは、緑地が増えていないか、ということです。
公園や緑地が増えるということは、
住民の立場から言うと、
憩いの場が増えて、環境保全になるし、
地震などがあった時の救援拠点にもなるので
嬉しかったりします。
ところが、自治体にとってみれば、
何か開発しようとか箱物を作ろうかと思ったのだけど、
作れなくなってしまった。
あの結構広い土地が余っているのでどうしようかと、
何にも使ってないというと皆に非難されますので、
とりあえず公園か緑地にでも
しとこうかということです。
これで公園が過去5年で15%くらい増えています。
■地方財政早期健全化法と自治体資産
一方、この間から少しお話していますが、
地方財政早期健全化法というのが去年できまして、
ちょっと危ないところはイエローカードで、
だいぶ危ないところはレッドカードだということで、
早く建て直さなくてはいけないということが、
夕張が破綻して以降問題になっています。
イエローカードはちょっと問題あるから
自分で建て直しなさいという警告で、
レッドカードは、もう自治体は信じられないから
全部明け渡しなさいということです。
夕張市はレッドカードなのですが、
こうなると総務省が自分で手を突っ込んで、
行政のサービスレベルは下げるのに
代金を無理矢理あげたり、
手数料を高くしたりというような形で
何とか建て直すという状態になります。
このレッドカードの状態というのは、
自治体にとってみれば「退いてろ」と言われて、
自分がいなくなってしまうことですから、
これだけは勘弁して欲しいと思っています。
なんとかしないと困るなと思い、
まわりを眺めてみたら、
実は自分は資産を持っていることに
気がついたというわけです。
今までフローの予算を作って
使うだけだったのですが、
よく見てみたら資産台帳に何か
資産があるではないかと、これいくらだと、
これを調べて場合によっては売ってみる、
ということがちょこちょこと始まっているのです。
総務省では、建て直せというからには
現状どうなっているのか
把握しなくてはなりませんから、
3年以内に民間企業に近いような
財務諸表や行政コスト計算書のようなものを
作って見せなさいというような話が
だんだん出来てきています。
これが、ちゃんとした
発生主義・複式簿記の会計であればいいのですが、
総務省方式といって昔から作らせた決算統計を
ちょっといじった方式でやらせようとしています。
そういう点で問題は大きいのですが、
一応、今まで全く見えなかったものが、
何かの数字としてだんだん見えるように
なってきているという効果はあります。
それによって、だんだん誤魔化しは
きかなくなってきているのです。
■行政財産と普通財産の違い
また、行政の資産を売る場合に、
ちょっと考えなきゃいけないことがあります。
行政の資産の中に行政財産というものと
普通財産というものがあるのです。
これは、地方自治法上で、
行政財産は売ってはいけないけれど、
普通財産は売ってもいいとか、
行政財産には私権としての
担保権の設定をしてはいけないが、
普通財産だったら抵当権などを
設定してもいいなどの取り決めがあります。
行政財産ということになっているとダメですから、
使っていないからといって
何でもかんでも売ることが出来る
というわけでもないのです。
しかしながら、何らかの行政目的に
使っている資産というのが
行政財産ですから、行政財産を売ろうとするには
普通財産に変えれば売却できることになります。
行政財産でも、自治体自身では一部しか使ってなくて、
空きスペースがある場合、
これに賃借権を設定することはできないのですが、
民間事業者の使用許可を
行政処分として出すことは出来ますので、
事実上、お金をある程度稼ぐということが
出来ない訳ではありません。
そういう意味では、行政財産を有効活用したり、
普通資産に変えて売却したりする
というようなことが、
本当は出来るはずですから、
これを一体どうやったらできるのか、
ということを考え始める自治体が
ぼちぼち出てきた、という状態です。