2008年11月27日 10:00
スコットランドの産学連携プロジェクト(その2)(産学連携マネジメント/高田 仁)
■プロジェクトの支援と管理
今日は、各研究プログラムの管理について述べます。
いくら産学双方に魅力的なテーマが設定されたとしても、
双方に意義ある成果を生むためには管理が極めて重要です。
スコットランドの事例では、
支援と管理を同時に実現するようにしています。
これらを同時に行うことで、大学の研究者としては、
サポートによる直接のメリットが得られるとともに、
ガチガチに管理されているという印象がないということで、
プロジェクトの進捗が非常に円滑に行われているそうです。
ここには、重要なファクターが2つあります。
■共通で使える施設
1つ目は、共通で使える設備や機器を企業が提供している点です。
企業がラボを作って機器を提供し、
そこに30名位の色んな専門の科学者やエンジニアを配置しています。
大学では分析しきれないような高度な分析や、
そういう機器を使った分析を、
このラボに委託することができます。
このラボは、色々なデータを解析するというサービスを提供することにより、
実はプロジェクトに参加している研究者の情報や
研究の進行状況の情報が適宜入ってくることにも繋がるそうです。
このように、製薬企業の人が支援することにより、
同時に管理もしているというしくみが実現されています。
■トランスレーショナルサイエンティスト
2つ目は、トランスレーショナルサイエンティスト
という専門家の存在です。
彼らは、医薬開発の専門家で、大学の研究にも精通しており、
最初の研究計画書を作る段階でのサポート以外でも、
実際に研究がスタートした後で、
実験データの読み方の相談などにも気軽にのってくれます。
そして、データの出し方に対するアドバイスも行います。
この過程もまた、支援と管理が同時に実現されているのです。
研究者としては、専門的な面から手伝ってもらい、
アドバイスももらえるわけですが、
実はそこでも、管理がなされているのです。
このような専門家の働きにより、
最終的に得られたデータは、
企業の中で、即使うことができるようになるのです。
■ファシリテーションの重要性
プロセスの管理の方法について、
現地の企業から来ているマネジメントのトップの人は、
「トランスレーショナルサイエンティストや、
解析のサービスを提供しているラボのスタッフは、
ファシリテーターの役割を担っている」と言っています。
色々な問題を抱えている人がいて、
色々な活動をしている人がいる時に、
うまく事が運ぶように舵取りをするというのが、
ファシリテーターの役割です。
大学の研究者と関わる人たちは、
ファシリテーターの役割を担っていて、
決して、警察のように“監視”することが役割ではない
と話していたことが、非常に印象的でした。
■産学連携とファシリテーション
日本の中でも、さほど意識せずに、
ファシリテーションとは呼ばないまでも、
マネジメントがうまく機能しているところには、
必ずファシリテーターの役目をしている方が活躍しています。
ファシリテーションというのは、
うまくことが運ぶように舵取りする役目です。
集団、グループによる問題解決、アイデアの創造、
合意形成、など様々な知識創造活動を支援し、
促していくという働きをするのが、ファシリテーターの役割です。
日本には、日本ファシリテーション協会という団体があります。
会議の円滑な運営、例えば、地域の街づくりの会合の運営などで
力を発揮しています。
異なる意見や考えを持つ人が集まる場で、
いかにうまく両方からいいものを引き出し、
共通の目的や方向性を明らかにしていくときに、
ファシリテーションは大きな力を発揮します。
産学連携は、もともと全くミッションや社会的位置付けも違う、
産と学という存在をうまく結び付けて、
両方の持っている良い部分を引き出すことが大切なので、
ファシリテーション型のマネジメントは、
今後の我が国の産学連携プロジェクトにおいても、
多いに重要になると思います。