2006年08月31日 08:20
中国での特許出願 その傾向と対策 (産学連携/高田)
WTO加盟後、中国では特許制度が機能するようになりつつあり、
日本企業からの出願も相次いでいるのですが、そこには注意点もあるようです。
今日はその辺りの傾向と対策についてのお話です。
■ 中国における外国の出願順位
先日、昨年度の中国における外国企業の特許出願件数が発表されました。
国別では日本が断トツのトップで、年間36,000件です。
2位はアメリカですが、その出願件数は16,000件ですから、
日本企業は2位のアメリカの2倍以上もの出願を行っていることになります。
続いて韓国が6,600件。
これらの出願はほとんどが先端技術分野に属しています。
■ 松下電器がトップを譲った背景
企業で見ると、これまで過去5~6年トップを維持してきた松下電器が2位に下がり、
韓国のサムスンが初めてトップに立ちました。
(ちなみにトップ10社のうち5社は日本企業です。)
松下のランキングが下がった理由というのは色々とあるのでしょうが、
大きく2つ考えることができるのではないかと思います。
ひとつはサムスンが単純に出願件数を伸ばしているという理由です。
サムスンは、もはやグローバル企業として高収益のビジネスを世界中で展開しており、
そのための特許戦略もしっかりしてきています。
もうひとつの理由は、松下電器があえて出願件数を抑制している可能性があるということです。
というのは、特許は出願すると1年半で公開されるのですが、
このことこそが技術流出に繋がってしまう危険性があるからです。
そのため、むしろブラックボックス化して、社内にノウハウとして貯め込むことによって、
日本の一番強い先端技術というのを独自に守ろうとしている可能性があります。
実際、同社の社長はここ1,2年、色々な所でその方針を公言しています。
■ 日本企業の特許出願の多さへの警鐘
実は、中国に駐在経験を持つ元特許庁の方も、日本企業の出願の多さに警鐘を鳴らしています。
それは、既述のように、安易な出願によって最先端技術を自らスピルオーバーさせてしまう
危険性があるからです。
特許制度の根幹として、出願して一定期間内に特許は必ず公開されます。
韓国や中国には、日本への留学経験を持つエンジニアや研究者が多くいます。
そういう方々にとっては、たとえば日本の特許庁のホームページにアクセスすることで、
公開された先端技術を分析することは比較的容易でしょう。
ですから、日本企業が国際競争力を維持するという意味から、
その特許は出願が必要なのかどうか、きちんと選別しなければならない
時代になったと言えます。
■ 出願に際する誤訳の問題
とは言え、やはり模倣品から自社ビジネスを守るためには、ある程度の出願は必要です。
しかし、出願に際する各企業の懸念として、特許書類に誤訳が多いという問題があります。
そして、各企業にはそれをチェックするバイリンガルの社内スタッフが不足しているのです。
ある調査結果によると、中国語の特許書類のチェックを行っているのは
企業全体の3分の1に過ぎず、さらにそのうちの7割は誤訳を発見しているということです。
誤った言葉のままで中国に出願され、その特許について裁判などに発展した場合、
自分達が考えていた権利範囲というものが正しく認められないことが
後から判明する可能性があります。
この言葉のリスクというものは非常に大きい問題です。
この問題に対し、産学連携で解決しようとしている会社もあります。
たとえば東芝は早稲田大学の中国語教育総合研究所と連携し、
特許の明細書の誤訳防止を行っています。
中国は魅力的な成長市場で、特許出願件数も増えています。
しかし、同時に十分その傾向を見極めながら、身を守る術を身につけておかないと、
リスクもまた大きくなってしまいます。