2008年05月05日
同化(2)と語尾子音の弱化 (異文化コミュニケーション/鈴木右文)
前回に引き続き、英語の発音における
同化についてお話しします。
■逆行同化
逆行同化は、
前回お話しした進行同化とは逆に、
後続の音の影響により、
先行する音が変化してしまう現象です。
代表的な例として、
「何かしなければいけない」という
義務を表すhave toとhas toという
表現をとりあげて説明します。
haveは「ハヴ」、hasは「ハズ」という
発音ですが、理由はわからないまま、
中学校の頃にhave toを「ハフトゥ」、
has toを「ハストゥ」と
音を濁らせずに発音するように
習った覚えのある方は多いと思います。
実際、このように発音した方が、
スムーズに発音することができます。
こうした現象が逆行同化です。
toのtの音は、いわゆる無声音であり、
濁らない音です。
無声音を発音する場合、
それに先行する音も濁らない音である方が、
発音が容易になります。
特に、子音と子音を連続して
発音することは難しいため、
連続する2つの音が
濁る音または濁らない音に
一致している方が発音しやすいのです。
こうした理由から、
haveの「ヴ」が「フ」という音に、
hasの「ズ」が「ス」という音に変化しています。
ただし、こうした音の変化は、
表現に意味の違いをもたらすことがあるため、
注意が必要です。
例えば、What schools have to tell us
という表現です。
単語としては、what「何」、schools「学校」、
have to「~しなければならない」、tell「言う」、
us「私たち」が含まれています。
have toの部分を「ハフトゥ」と発音すると、
「~しなければならない」の義務の意味が入り、
「学校が私たちに言わなければならないこと」
という意味になります。
しかし、have toの部分を濁った音のまま、
「ハヴトゥ」と発音すると、
「私たちに言うべくして学校がもっているもの」
という意味になります。
この場合には、「与えなければいけない」という
義務の意味ではなくなります。
つまり、haveの部分で
いったん意味上の区切りがあり、
to tell usは目的を表すことになります。
したがって、意味上、haveとtoの間に
区切りがある場合は「ハヴ」と発音し、
「~しなければならない」の意味の場合は、
無声音化して「ハフトゥ」になるのです。
逆行同化の別の例として、
日本語の50音の最後の「ん」について
説明しておきます。
表記の上では同じ「ン」であっても、
発音としては3つの異なる音があります。
まず、「アンパン」という場合の
「アン」の「ん」の音です。
この音は、[m]という唇と唇を使って出す音です。
次に、「アンタ」という場合の「ん」は、
[n]の音であり、後続のtを発音する際の
舌の位置で音を出しています。
最後に、「アンコ」という場合の「ん」は、
口の奥の方で発音します。
3つの「ん」の音は、
それぞれの場合において、
後続の音の発音が容易になるように
微妙に変化しています。
「アンパン」の[p]は唇と唇を使う音、
「アンタ」のtは舌の位置で出す音、
「アンコ」の[k]は口の奥の方で出す音です。
つまり、後続の音を出す位置に応じて、
先行する「ん」の音を出す位置も
変わっているのです。
また、writtenやforbiddenを発音する場合に、
nが鼻の音であるため、
先行するt/dが鼻の中で破裂する
鼻腔破裂という音もあります。
■相互同化
相互同化は、先行する音と後続の音が
融合して一緒になってしまう現象です。
英会話学校などで
よく取り上げられていますが、
例えば、Why did you come?
「なんで来たんだよ?」という表現です。
Why did you come?が、
「ワイディヂュカム」と発音されます。
この相互同化ができるようになると、
英語を話す速さは大きく向上します。
「ワイ、ディッド、ユー、カム」と
単純に早く発音することは困難ですが、
相互同化させると「ワイディヂュカム」と
楽に発音できます。
また、I want youの場合も、
「ウォント、ユー」と発音することは
難しいのですが、やはり相互同化させれば、
「アイウォンチュ」(「チュー」でなく「チュ」)
と楽に発音できます。
■語尾子音の弱化
日本人の英語の問題点の1つは、
どの音も全てきちんと
発音しようとすることです。
これに関連するのが、語尾子音の弱化、
つまり単語の最後にある子音が
弱い音になるという現象です。
例えば、I want to do it
「僕はそれをしたい」を発音する際、
wantのtとその次のto不定詞のtの音が
連続しています。
このtとtを連続して発音することは、
非常に困難です。
そのため、実際に発音する際には、
wantの語尾のtの音を非常に弱くするか、
あるいは発音すること自体をやめてしまい、
「アイウォントゥドゥイッ」と
発音するのが一般的です。
このように、英語には子音で始まって
子音で終わる単語が多いため、
子音が連続する場合には、
語尾の子音を弱くして楽に発音を行います。